れおん

ハウス・ジャック・ビルトのれおんのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
5.0
1970年代、アメリカワシントン州。ジャック、夢は建築家として家を建てること。芸術を創り上げたい。利己主義・俗悪・無礼・知性・家族。衝動的に本能的に生きる。感覚を上下左右に揺さぶられ、魅了され、心を奪われ、地獄の果てまで墜ちて、墜ちて、墜ちてゆく。

彼が生きた意味。無修正完全ノーカット。彼は何を想い、感じ、理性と狂気の間で生きたのか。人間としてあるべき姿を保とうとするが、すぐに欲望に飲み込まれてしまう。

電灯が並ぶ夜道。電灯に近づけば我々の影は小さくなる。しかし、電灯をすぎ、その先の電灯までは影は伸びていく。先の電灯の影と融合し、境地の間に立たされる。そして、新たな電灯にたどり着くと、また影は小さくなっていく。

芸術的な家を建てたい。設計図を描き、建て始めるが納得がいかない。破壊衝動に駆られる、ぶっ壊し、新たな設計図を描く。そして、人を殺す…

人間として存在できる境界線を彼が超えたとき、彼は新たな扉を開く。彼は家を完成させ、満足し、人間ではなくなる。

彼が人間ではなくなる前の未完成の家、ただただ美しかった。広い荒野に古い木材で建てられた三階建の家。窓もない、扉もない。

破壊と創造、彼はただ生きたかった。生き方を知りたかった。彼が生きるためには、家を作らなければならなかった。そして、そのためには手段を選ばない。理性なんてものはない。そんな彼に我々は魅了される。彼はサイコパスなのか、表裏一体の境地を綱渡りする。
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