蒼井ことり

50年後のボクたちはの蒼井ことりのネタバレレビュー・内容・結末

50年後のボクたちは(2016年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

うーわ、ヤバイの見た。
この映画はクール。
人生の教訓になる何度も見たいやつ。
なかなか良い邦題。
(原題は『チック』かな?)

「50年後、またここで会おう」
と若い彼らは約束できる。
では私は?
めちゃめちゃ長生きしてれば生きてるかもしれないが、ほぼほぼ死んでる。
年々早くなって行く一年の体感速度。
50年なんてあっという間だ。
人間の人生なんてあっという間だ。

夏休み前、タチアナに夢中だったマイク。彼女の誕生会に自分だけ呼ばれないと悩んでいたマイク。
風変わりなロシアからの転校生、チック。
彼との出会いと、彼と過ごした夏休みは少年を大きく変えた。人生には限りがあるから、必要のない人間、必要のない悩みに煩わされることをキッパリとやめたのだ。
14歳でこの気づきは羨ましい。ずいぶん年上の私は、まだくだらないことで時間を無駄にし続けているというのに。

少年たちのひと夏を描くロードムービーはよくある。これは結構ガツンとくる。初っ端から血まみれで病院に運ばれているのも、カーチェイスっぽいシーン(ピアノの貴公子、リチャード・クレイダーマンの華麗なピアノの調べがミスマッチすぎてツボだった)も、このテのジャンルでは今までになかった刺激を受けた。

チックはとっくに“経験済み”と思っていたが、なんとゲイだったとは。ドイツ系ロシア人とかなんだろうけど、思いっきりアジア系の顔立ちで流暢なドイツ語というのが面白い。チックはその後どこに行っちゃったんだろう。
14歳の男の子2人が車内で長距離ドライブ中、恋やエッチの話のひとつも出ないのが不自然だなぁーと思ってた。どうりで。
マイクの夏休み明けの、キリッとした男らしい表情も良かった。
イザの、透き通ったエキゾチックな水色の瞳と、ばっさり切った黒髪のショートヘアも良かった。
(文化の違いだけどドイツ系の人は結構胸出すのに抵抗ないね)。

父親の一発(華麗にジャンプしたところで止め絵になるのが笑える)に、私はビックリした。え?ドイツっていまだにこんな体罰してんの?と。
でもマイクのモノローグに納得した。
体罰は良くないっていうけど、ぼくは一発食らうことでなんか変わることもあると思う、的なことを彼は呟くのだ。
確かにそうかもしれない。

裕福そうだけど、母がアル中、父は不在(同僚の若い恋人がいる)って、これアダルトチルドレンになるパターンだけど、マイク大丈夫か??
ひと夏のワラキアへのハードな旅で彼は強くなった。大人になった。
旅の帰路のカーチェイスで、羽目を外して前方のトラックを横転させたがマイクとチック。罪に問われるのは15歳からだと、マイクは警官に向かってタカをくくるが、それはチックの勘違い。14歳から罪に問われるのだ。
罪を負うということは、即ちもう子供じゃないということだ。
マイクは家庭環境に負けず、きっとまともに成長していってくれるだろうと信じてる。

エンドロールで流れるパンクロックもいいなぁ。ドイツ語のラップカッコいい。日本風のアニメーションはもうヨーロッパに定着したね。人の真似じゃダメ。自分らしく生きなきゃ。あっという間に50年経っちゃう!!


※余談
この秋、ドイツ(ベルリン+α)に行く予定で行けなった。たまたま見に来たこの映画はアメリカかフランス映画と思っていたら、聞こえてきたのはドイツ語。そして舞台はベルリン。わーお、ラッキー!!少しだけ旅行気分が味わえた。ワラキアってどこだろう。調べてみよう。同じアジア系の顔してドイツ語ペラペラなチック役の子が羨ましい!!
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