ひこくろ

僕らの未来のひこくろのレビュー・感想・評価

僕らの未来(2011年製作の映画)
4.4
ものすごく切実な映画だと思った。
性同一性障害の女の子にとって、制服を着て学校に行かなきゃいけないってのは屈辱に近いものがあるのだろう。
自分の体が徐々に女性らしくなっていくのだって耐えられないことに違いない。
そこに生理までくるのだ。自分の身体を呪わないではいられないだろう。
しかも、彼女は誰にもそのつらさを打ち明けられないのだ。

クラスメートから酷いことを言われたり、されたりしても彼女はじっと黙って耐えている。
両親にもカミングアウトすることができない。
「自分は普通じゃないんだ」と、ただすべてを自分で受け止め、黙って耐えている。
彼女が普通に接することができるのは、同じ悩みを抱えているヨシキとハルカだけだ。
でも、そのヨシキも、彼女と同じか、それ以上に苦しんでいる。

自分を否定しなければ生きていけない世界はあまりにも残酷だ。
優は好きな女の子に告白されても「普通に男の子と付き合ったほうがいいよ」と諭す。
ヨシキは「ホモって気持ちわりいよな」と語る同僚に、「本当に気持ち悪い」と相槌を打つ。
そうすることでしか、世界が彼らを受け入れてくれないからだ。

「セックスしよう。そうすりゃ俺も男になるし、お前も女になるだろ。治らなかったら死ぬよ」
という台詞のあまりにもな悲しさ。それを受け入れざるを得なくなる優のあまりにもな生きづらさ。
苦しくて苦しくて、本当にどうしようもなかった。
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