トミー

春の饗宴のトミーのレビュー・感想・評価

春の饗宴(1947年製作の映画)
3.9
100万円の宝籤が当たった老人と身売りしてしまう劇場の騒動を同時並行で描いていく娯楽映画だが思いの外楽しめた。

今作の白眉はなんといっても笠置シヅ子氏が歌う「東京ブギウギ」である。
戦後の重苦しい時代を持ち前の溌剌とした歌声で民衆を沸かせた彼女のステージは圧巻の一言だった。
轟夕起子氏の歌もまた絶品だった。

宝籤が当たり恐怖する老人とその孫娘と、長年の夢であったオペラをすることに心踊っているもののヤクザに騙されている歌手の二組を描くことで、分不相応な夢は持つなというメッセージがあるのかと考えたが、最後は老人が当たった宝籤で身売りする劇場を買い取るというハッピーエンドで終わらせてくれて気分良く視聴できた。

ラストの轟夕起子氏や笠置シヅ子氏らの呼びかけで、劇場内の観客全員が歌い踊る様は多幸感があり、観客を飛び越えて映画を観ている視聴者にも呼びかけるシーンではなんて良い映画なのだと感激した。
喜びや幸福の伝播ともとれるこのシーンは、戦後を代表する笠置シヅ子氏の生き様にもリンクしているのかもしれない。
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