セクシュアル・マイノリティーと望まない妊娠、と現代的でありながらも、自己についての普遍的なものもテーマとしていた。
ジュンコ。内と外とのねじれの違和感というのはすさまじいのだろう。築けないはずの平凡な家庭への憧れ。父への憧れ。そして希望に触れて、変化が怖くなって。結局自分は何なのだという疑問が首をもたげてくる。セリフにもある通り、自分の輪郭がぼやけている怖さ。
アカリ。結局金がないから産むしかなかった。恋愛を失うのを恐れて、すがることのできない弱さが等身大。イラつきもするが。
ふたりして、何が何だかわからなくなってしまう。
喫茶店や食事のシーン、主人公ふたりが向かい合ったところが、いわゆる「男らしさ」と「女らしさ」の対比がよかったとおもう。あれだけ見れば、なんだわかってるんじゃないかとも言いたくなる。
脇役の男性陣がすばらしかった。クソ野郎もいい奴も。
結論としてはありきたりだが、その人はその人だというのはやはり真理なのだろう。社会的な分類に属しきれないからといって、自分自身を見失う必要は全くないのだと。それが難しいのだろうけど。
宙ぶらりんの赤ちゃんの未来を思わずにはいられない。