あなぐらむ

赤線地帯のあなぐらむのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
4.7
「夜の女たち」に連なる"特殊女性"モノ。
売春禁止法施行前夜の吉原遊郭に集う女達を、突き放したタッチで描く。それぞれの事情を抱え流れついた女達、ある者は息子に縁を切られ心を病み、ある者は逞しく男を操り出ていく。まるで観る者を責める様な、そんな眼差しの映画。

お茶引きの年増女郎達の不器用さに比べ、言葉巧みに男をたらしこむ若尾あややの逞しさと業の深さ、一見奔放に見えるが深い傷を抱えた神戸(ここにもカスバがあった)育ちの流れ者・京マチ子。
群像劇を点描していく宮川一夫の自然な移動撮影の妙、ディゾルブを用いる独特な繋ぎが、切れ目無い、渇いた物語空間を作り出す。
今や赤線研究家たちのバイブルにもなっている作品だが、そのドライな仕上がりには震えがくる。