津波に見舞わたピアノについて語る龍一さんの言葉がとても印象的だった。
「もともと自然にある物質を、人間の工業力とか文明の力で、自然を鋳型にはめる。
音も調律が狂っていくので、人間は狂うって言いますけども、全然狂っているんではなくて、自然のこの物質達は、元の状態に戻ろうと必死になってもがいてるわけですよね。
津波っていうのは一瞬でバンときて、自然に一瞬に戻した。
今僕はその自然が調律してくれた津波ピアノの音がとってもよく感じるんですよ。
てことはやっぱりこのピアノ的なもの、人間が無理やり自分の幻想に基づいて調律した、いわば不自然な、人間的には自然だけれども、自然から見ればとても不自然な状態に対する強い嫌悪感が僕はあると思うんですよ、僕の中に。」
自然と人はどう関わり合うべきか。この間友人に「環境問題は人間のエゴによって生み出されたものだから、人間が解決しなければならない」と熱心に語られたのだが、坂本さんも同じようなことを語っていた。
北極の氷の中に釣りのようにマイクを入れ、「I’m fishing sounds」と笑顔で話す坂本さんもとても可愛かった。雨の音を録音するシーンも出てきていたが、普段意識していない音も、意識して耳を傾ければそこには無限の広がりがあるのかもしれない。
そして戦場のメリークリマスのピアノ演奏は鳥肌がたった。音楽一つで、あそこまで人の心に何かを届けられのかと。それとは相反するような、若い頃の坂本さんが東風を弾きながら電子ピアノについて説明する姿もまたいい。初めてYMOのライブ映像を見た時の衝撃が頭から離れない。