マクガフィン

ミッドナイト・バスのマクガフィンのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・バス(2017年製作の映画)
2.5
東京から故郷の新潟に戻った男が元妻の再会をきっかけに、離れ離れになった家族が再出発する模様を描く物語。原作未読。

夜行バスで通過するトンネルがトリガーになり、トンネルを抜けると人間関係や心情が変化していくのに、行先を示して場所が切り替わるだけでノスタルジアに駆られなく、作品通して最後まで同じ熱量で淡々としていて抑揚に欠ける。

地方をフィーチャーする企画ならまだよいが、地元スポンサーや地域の観光地や名産のディティールをセリフと映像で沢山描写して157分と長尺に。町おこしのための地域映画の域はでなく、喜ぶのは地元の人だけ。スポンサーや地域の自己満足なことが、これといった観光名所がないことと一緒で悲しい。本当に地域ブランドイメージや観光客が増えると思っているのだろうか。

男性目線で展開したり、「男親は扇の要だ」のセリフをドヤ顔で言うことに象徴されるように、地方が中央以上に男社会で家父長制である実態を炙り出す。そんなこんなでエモを振りかかしても如何なものなのか。

家族の再生と再出発をテーマで、人間関係が家系構成も相まって複雑に絡み合うのだが、寄り添いながら話し合うことが重要なことは理解できるが、わだかまりが解消できなかった長男が急にリードする構成になったのは何故だろうか?
一歩踏み込んで失敗することが怖いのは結果と結論の先送りなことだとは理解しているが、それが中々できないことは誰しもあるのでは。
過去が原因となる現状問題の向き合い方を考えさせられる。

157分の冗長を耐えられたのは、主人公・原田泰造の演技力に尽きる。「ボクの妻と結婚してください。」ではドライで無機質な演技だと思っていたが、今作はお笑い芸人ということ背景を微塵も感じさせなく、力みが全くない演技とシーン把握能力が秀逸で、表裏一体な優しさと弱さを持ちあわせ、それ故に人生の傷の痛みと重みを背負いながら前に進む健気さに胸を抉られる。

話し合うことで埋めた溝を、海を越えて戻らない理由を話さないで巣立って行く模様に言葉を失う 。