菩薩

まるでいつもの夜みたいに 高田渡 東京ラストライブの菩薩のレビュー・感想・評価

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まるでいつもの夜みたいに、小さな店にぎゅうぎゅうの客、渡さんはギターを抱え、眠いのか酔っ払ってんのか、いやたぶんあの透明の液体は焼酎?もしくは泡盛だと思うんだけど、ギリギリの呂律で爆笑を取りつつ、目の前に存在している「歌」を、静かに手に取り観客に届ける。渡さんは歌うわけでも上手に奏でるわけでもなく、ここにこんな歌がありますよと、ただ皆に紹介しているようにいつも見える。そこに気取りも格好つけもなく、そうやって届けられる歌は、ただすんなりと、心のどこか奥の方に、暖かいものを感じさせながら届くのだ。最後も本当は「生活の柄」で締めるはずだったのに、飽きちゃったからって他の曲に変えちゃって、でもそんな瞬間に立ち会えた観客は、みんな幸せそうな顔をしていた。一度でいいから目の前で、あのくしゃくしゃの笑顔と、小さく丸まった体と、それとは対照的に機敏に動く指先とを体感してみたかったけれど、それはもう叶わないから、せめて忘れないように、いや一度聞いたら忘れられるわけなんて無いのだけど、これからも僕は、高田渡を聴き続けようと思う。
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