ケーティー

ナショナル・シアター・ライヴ 2017 「一人の男と二人の主人」のケーティーのレビュー・感想・評価

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他のナショナル・シアター・ライヴの作品とは全く異なるナンセンスコメディ。


簡単な伏線はあるが、人物と設定だけ作って、ずっと一発ギャグとその場その場のめちゃくちゃな会話で魅せていく。伏線やフリを丁寧に作って、どんな役者でも受ける(誰にでもそこそこ最低受ける)という作りではない。だから、ある意味役者の力量任せで、一定のレベルの俳優を揃えられるナショナル・シアターだからこそ成立している。しかし、丁寧に伏線やフリ、構成で見せていかないからこそ、予想できない面白さがある。

一幕は何がそこまで観客に受けているんだろうといまいち、乗れなかった。しかし、それは、伏線と構成を気にする自分の頭の固さゆえだとわかり、特に2幕は笑いっぱなしだった。人物と設定だけつくって、とにかく、ぶっ飛んだ言動をさせる。それで作品は成立するし、観客はそれを純粋に楽しむことで充実した時間が得られると再認識させらる作品。

本作を観て、クドカンさんの作品を思い出した。クドカンさんの方がもう少し伏線など巧妙で丁寧なつくりだが、ぶっとんだ人物のやりとりで笑わせるのは常道で、今放送されている「監獄のお姫さま」もまさしくそれだ。時事ネタやあるあるネタを絡めた一発ギャグが多いため、謂わば日常がフリとなって、突拍子もないギャグとは思わないのが違う。ただ、作品内だけで見れば、主人公が作中に何のフリも伏線もなく、突拍子もないギャグをする。その本質は同じである。また、本作の構造自体は吉本新喜劇にもかなり通じている。

このように終止一発ギャグ的に笑わせていく作品だが、最後は様々な伏線も絡み合い、収束していた。


※主な面白いシーン
・お腹が空いたという欲求にあまりに忠実ゆえ、主人の料理をむちゃくちゃに改変してつまみ食いをする主人公。
・ヨボヨボのおじいさんなのに、今日が勤務初日の給仕(このおじいさんはラストも痛快)
・何かとすべての会話の返しやきっかけのセリフ、行動をショエイクスピアかぶれのくさい芝居でする青年
・橋の上でのすぐに地面に降りればよいのに、無駄に欄干の上に立ち離れたところで、お互いの愛を確認し合うカップル
……etc