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空飛ぶタイヤのhynonのレビュー・感想・評価

空飛ぶタイヤ(2018年製作の映画)
4.6
きっとこれは氷山の一角なのだろう。

製品瑕疵、データ改ざん、偽装、ずさんな衛生管理や品質管理、不法投棄…
組織の不祥事は後をたたない。
表沙汰になった件だけでも数えきれないほどある。

数々の不祥事から分かるのは、利害と保身が絡むと人間はどこまでも非道で冷徹になれるということ。

組織を守る、社員を守るという大義や、少しでも楽して利益を増やしたいという飽くなき欲望の前では、良心もモラルも消え失せる。
それが顧客の損失や被害や死をもたらすとしても。

大組織に立ち向かう個人、という点で「新聞記者」に似ているが、どこか近未来SFのような非現実感があった「新聞記者」よりも、こちらの方がリアル。
結末は「新聞記者」の方がリアルかもしれないけど。

組織で働く一人ひとりにこういう人間らしさや道義心が、声を上げる勇気が必要なのだ、それがあれば現状を変えていけるかもしれない、という希望を込めての物語なのだろう。

深刻な題材ながらもサスペンスとしての面白さがあり、キレのいい展開で最後までグイグイ引っ張る。
明快な起承転結に、怒涛のカタルシス。

映画的な決め台詞や決めシーンがちゃんとあるのもよかった。
この展開、この文脈での「中小企業なめんなよ」とか、実にかっこいい。

俳優陣も実力と個性と華があり、見応えのある社会派サスペンス。
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