アラサーちゃん

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

3.5
いやーよかったです。もっとガッツリ頭のかたい政治もので、観ていて眠たくなるタイプかと思ったんですがそんなことなかったですね。
内容がとにかく重たいぶん、要所要所にユーモア溢れるコメディタッチがふんだんに散りばめられていて、くすっと笑える。
そして、台詞もテンポもすごくいいので、歌やダンスこそないけどミュージカルシーンにしたらいいんじゃない?という箇所がいくつもあった。

個人にフォーカスする映画だと、実話かいなかによらず、どうしても主人公の挫折・心がぽきっと折れる展開はつきものなんだけど、そのあたりがちょっとお座なりだったような気がします。国王が親友や全幅の信頼を寄せた前首相を差し置いて、チャーチルを支持するのもとってつけたようでなんだかなぁ。

とはいえ、ウィンストン・チャーチル像はとても良くできていて、史実に基づいて考えるとどうしても美談だけでは語れない実際のチャーチル、というかわたしがこれまでイメージしていたチャーチルとはどれだけ異なっているのか・・・とも思ってしまうけど、すこぶる魅力的に描かれている。これはすごい。
単にゲイリー・オールドマンが扮しているからではなくて、おっさんのなりした子どもみたいな、人好きのするチャーチルがこの映画のなかで描かれている。

どこでそんなに魅力を感じるかって、やっぱり妻とのくだりや、ミス・レイトンとのくだり。デュエットで歌を歌ってるのかと思うくらいに息ぴったりで言い合う夫婦は絆を感じたし、ミス・レイトンと涙するシーンは、息を飲んじゃうくらいいいシーンだった。

トイレと葉巻とスコッチ。いつ爆弾が落ちてくるかも分からないご時世に、呑気にルーズベルトから「馬」なんか提案されて言葉を失うチャーチルのシーンはお気に入り。

ぎいぎい椅子のきしむ音や、光、鏡、映像が優等生の仕上がりでなんかため息つきたくなるくらい美しかったなー。車の中からチャーチルが眺める市場の比較や、チャーチルとカレーに駐留している准将の比較。ほうほうと思いながら観ていた。

大演説をクライマックスに持ってくる映画はなにかしらやっぱり傑作になるし、どの点のどこを切り取っても誉める以外にできない作品だったなって思う。そのわりに評価がそこまで高くないのは、完全に主観で好きかどうかっていうだけです。
それにしても、地下鉄のシーンは、泣いた・・・