ねこねここねこ

消された女のねこねここねこのネタバレレビュー・内容・結末

消された女(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

なかなか面白かった。
でも最後のどんでん返しに重点をおくあまり、きちんと伏線回収出来ていない部分もあり、そこはしっかりやって欲しかったかな。
この事件は複数の韓国で実際にあった人権無視の精神科医療保護に関する事件をもとに作られたよう。
小さい頃は私も「◯◯病院の奥さんが無理矢理精神科病院に入院させられて、もう二度と出て来れないよね」などという話を耳にしたことはある。はっきりと検査結果で数値化や画像化できない疾患ゆえに本人がいくら私は正常だと言っても有耶無耶にされやすい場所ではあると思う。
そうした精神科病院と熾烈なTV業界を舞台に描かれている。
入院実態があやふやな病院があれば、また第三者からそういう実態(入院していたのに入院記録がないなど)が証言されれば、逆に言えばそこに無理矢理入院させられていたという話もでっちあげることもできる。それを利用した完全犯罪も可能だろう。
TV業界でヤラセが発覚し、干されたディレクターに届いた精神科病院の入院患者からの日記。それを足掛かりに再び復帰しようとするナ・ナムス。
継父である警察署長を殺害したとされるスアは入院記録にはないが、そこにある日突然拉致され監禁状態で入院してしていたと主張。
入院中、スアに唯一優しく接してくれた看護師のハンという男性はナが今や廃病院と化した病院内を撮影していた時にひどい火傷を負うた状態で発見される。

事件の真相は?
スクープを求めるナとある意味利害が一致してやがてスアは継父殺しの嫌疑が晴れて自由の身になる。
迎えに来たナとの別れ際、スアは送った日記とともに「病院ではただのボールペンでも凶器になるのよ。患者には持たせない」と言ってボールペンを渡す。
この辺は差出先がわからない日記や回想中のハンの台詞を伏線回収している。
また自分を助け出そうとしたイ・ウジンという青いシャツの男性は実は亡くなった実父であり、もうこの世には存在していないから、ナが探しても見つかることはない。 
ただ看護師のハンは全く放置されており、なんで1年も経って廃病院となった場所に火傷の治療もせずにハンがいたのか?ハンはなぜ治療中の病院からいなくなったのかがまるで謎。
継父である警察署長は自殺だと側頭部から弾が入るはずで、回想のように後ろからスアが撃てば当然弾道がまるで変わるよね?などの細かなところがツッコみたくなるが…。
継父から性的虐待を実際に受けていたかもしれないし、継父が薬物中毒だったのは本当かもしれないが、そして臓器売買も事実かもしれないが、どんでん返しを狙う余りすべてが曖昧模糊に。
実は病院で拉致監禁されていたのは母親で、おそらく母親(妻)の財産を狙った継父が病院に強制入院させ、臓器売買の臓器の提供者として殺されるところで、死亡検案書を偽造してもらったので、財産の名義を全て自分に書き換えた直後の病院の家事。
ハンの手助けでやっと救いに来れたスアと再会した母親、(作られた回想中ではやっとスアと再会できたイ・ウジンという青い服を来た男性だが)なぜ院長に連れて行かれる時にもっとしっかり母親の手を引かなかったのだろう?火だるまで死にかけの院長のなすがまま。まぁ、麻酔もかけられず腹部切開され臓器を取られそうになってという大怪我を負っていたら力は入らないだろうけど、それなら母親の「どこか怪我はない?」という台詞はおかしいことになるという矛盾。
最後はハンが現れてお礼でも言うのかと思ったが、ハンの姿はない。
でもコーヒーを淹れるカップが2つ、そして後ろにぼんやりと人影。あれがハンなの?
最後はともかく、色々伏線回収が雑なために残念にはなったけど、全体的にはまずまずの作品。
そして何より、この大スクープ、ナがハンの声を勝手に入れたことでまたまたヤラセに。懲りないね。でももしかしたらここもナならやるとスアはお見通しだったのかな?
そもそも全てがスアの計画ならば、スクープ自体が大掛かりな嘘。犯人を無罪にする証拠捏造だということ。でもナは決して口外はできないし、しない。
それが1番の怖さかな。