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誰がための日々のkiritoのレビュー・感想・評価

誰がための日々(2016年製作の映画)
4.0
【人任せ】

正直、またすごい監督がアジアに現れたなという印象。

躁鬱病の長男が退院してくる。彼は1年前心も体も病んだ母を介護中に殺害(事故)していた。父は狭いアパート暮らしの中で彼を受け入れるが…

母と長男との関係性、長男と父との関係性、そして家族との関わり合いは金で解決しようとするアメリカで活躍する次男。
張り巡らされた負の絆を描きつつ、社会の中で生きていくしかない、どこにでもある現実がこの映画の中にはある。
あまりにも現実的過ぎて虚構がなくあたかもドキュメンタリーかのような作りであるが、もう少し遊びの幅はもたせても良かった気もする。

特に父と息子の確執が良い。介護中には一回も関わりを持たず助けなかった父であるが実は彼なりの理由があったりもするし、その贖罪かのように息子を受け入れ、腫物に触るかのような関係だったのが、奇しくも父として成長していく形にもなっている。
逆に電話の向こうの次男は何でもかんでも「人任せ」にし、過去の自分を見ているようだったに違いない。

長男と隣の部屋に住む親から勉強しろと怒られる子供との屋上のやりとりがこの映画中の唯一の救い。

重いけど、余韻も含めてクオリティは高い。

2020.5.14
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