完全なフィクション作品でありながら、ドキュメンタリーのような雰囲気も持ち合わせているのが面白い一作。
記者である主人公の語りと、手持ちカメラで撮影されるアトリエの映像が相まって、本当にジャコメッティの家を覗いているような気分になる。
一風変わったジャコメッティ家と主人公の距離感が実に絶妙だった。
家の中にいるんだけど、一方で完璧なアウトサイダーでもある感じ。
絵でも料理でも、何かを模索しながら創作していくとキリがなくなるのはよくある事。
「やめ時が分からない」「手を加え過ぎて元に戻したくなる」というあるあるは天才ジャコメッティにも共通だったらしい。
映画全体がグレーっぽいトーンで、ジャコメッティが作中描いている絵と似た色合いになっている。
映画も絵と同じく完璧な完成などありはしないのだ、というメタ的なメッセージを感じた。
あっさりしたラストには賛否両論あるかもしれないが、「仕事を終えた男達」という感じがして自分は好き。