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5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生のNMのレビュー・感想・評価

3.3
あきらかに感動が約束されている作品。タイトルで奇跡が起こりますとバラしてあり、安心して観られて期待を裏切らない。ただその途中では困難が続く。

ミュンヘン。
憧れのホテルに就職をめざす主人公サリー。学校の成績も優秀。
しかし研修を前にして、先天性の網膜剥離が急激に進行。
みるみる見えなくなり、視力は通常の5%に。
それでも研修が受けさせてもらえるとは考えづらい。どうしても受けたいサリーは、周りの協力を得てそれを隠して参加にこぎつける。

掃除や調理補助に始まり、フロントや料理の給仕まで科目は幅広い。
周りの助言とひたすらの努力で何とか乗り切っていくが、ホテルも恋愛も実家も問題が重なって…。

ホテルの上司たちは、職人気質で頑固な人もいて、手取り足取り指導するのではなく見て学べという姿勢。ホテルの格を下げるようなことは少しも許さない。
つらい思いをしながらも熱意と知恵で乗り切っていく様子は見ていて爽快。
そして苦労する様子は見ていてとても辛い。

隠しているには限界があった。
道を杖なしで歩くのも危険なのに、結婚式場でシャンパンを運ぶなど無理な話。ムキになっていたからこそ頑張れた部分もあるが、自分だけでなく周りにも危険や迷惑が及んだ。

しかし親友や彼を支える人は、危険なことでも敢えて止めない。やりたいことは後押しし、本人が怖気づくようなことさえも後押しする。安全な場所に閉じ込めない。失敗を含めて見守ってくれる。

隠した状態では四面楚歌になったが、秘密を告白するとふいに全てが上手く回り始めたのが印象的。
「目が見えない」「極度の弱視」と言っていたのを、告白した後は「障害」という言葉を使っていたのがリアルだった。
外野からすれば早く言えとも思うが、実際自分に起きた時それを認めるのは相当辛いことなんだろうと思った。できないことをみんなの前で認めるということ、しかも今までできていたことを。

コールセンターも素晴らしい仕事。現代において必要不可欠だし、サリーならきっとかなり上手くやれるだろう。出世すらできるかもしれない。しかし夢を諦めず、自分の限界を定めなかったことで幸せを得た。
型にはめることはその人ができることまで制限することにもなりうる。

みんなが協力しあうことで、ある日自分に障害が起こっても助け合える社会になる。現金や職業斡旋も必要だが、その人の人格を認め尊重することが本当の共生だと気付かされた。ただ障害があるからといってあなたの道は絶対にこうですと決めつける権利は誰にもない。

メモ
「公園で電話するのはマナー違反よ」という台詞が気にかかった。公園は子どもたちの遊ぶ場、公共の場で携帯をかけてはならないというルールが浸透しているということだろうか。欧米ならどこでも大体そうなのだろうか。
最後の、レストランに外から入ってきた人がそのままの手で料理皿を運ぶという描写も気になった。今(コロナ禍)はもう少し衛生に注意されているのだろうか。
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