ちろる

ソウルメイト/七月と安生のちろるのレビュー・感想・評価

ソウルメイト/七月と安生(2016年製作の映画)
4.3
手を伸ばしても掴むことができない、かけがえのない日々とそのぬくもりと。
初めて目があったその日から決まっているような気がした。
何もかもが一緒になることを。
苦しみも、喜びも、全部互いのものになれば、何もかもを飛び越えられると信じていたあの頃。
いまはただ懐かしむだけ。

幼馴染の七月と安生はまるで一卵性の双子のようにいつも一緒のいわゆるソウルメイトのような存在だった。
時はたち、チーユエ(七月)という謎の作家が書いた自伝的インターネット小説として世に人気が広がりつつあったが、出版社はチーユエを探すことが出来ず安生に問い合わせで来ることから、立ち止まった2人の時間がまた動き出していく・・・

岩井俊二監督の『花とアリス』を彷彿とさせるような2人の少女時代のシークエンスの他、白銀のシーンは『ラブレター』も思い出さずにはいられない。
監督が意識しているのかと思ってたらエンドロールに岩井俊二のクレジットが・・・
どうやら映像指導?的なポジションで関わっていたらしいということで、岩井俊二の世界観が好きな人には是非鑑賞してほしい作品。

ちなみに内容も①実際の彼女たちの少女時代から大人になるまで ②安生の視点で描かれる今 ③七月が書いた小説の中の世界
と三層の構造になっていて、これらを見せながら、「あんなに仲の良かったソウルメイトの2人が、なぜ今共にいないのか?」の謎を紐解いていくミステリー形式になっているのが面白い。

物語の中でも、架空の話(小説の世界)が加わることによって、ショットやシークエンスをうまく使い分け、何を見せたいか、何を隠したいのかを巧みに使い分けていてお見事だった。

女同士の友情を軸にした青春映画なんて吐いて捨てるほどあるものの、これらのプロットの秀逸さや、透明感のある岩井俊二仕込み?の映像世界のおかげでかけがえのない唯一無二の作品に仕上がっている。

そしてそうなったのも間違いなく、チョウ・ドンユイがヒロインであったことも大きいのではないかな?
『サンザシの樹の下で』からちっとも変わらない透明感で、彼女の小悪魔な魅力を出すのもとても上手い彼女の存在感に釘付けになる、切なくも美しいラブストーリーでした。
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