イチロヲ

日本脱出のイチロヲのレビュー・感想・評価

日本脱出(1964年製作の映画)
3.5
窃盗団の一員にされた青年(鈴木やすし)が、仲間のトルコ嬢(桑野みゆき)と一緒に海外への高跳びを企む。64年度東京オリンピックを背景にして、しがない青年による人生の急転直下を描いている、サスペンス映画。

ついさっきまで外部の人間だった青年が、窃盗団の有象無象に取り込まれてしまう。犯罪者の生態と社会的底辺部のジタバタを重ね合わせるという、ピカレスク・ロマンの王道パターン。

サスペンス劇場の内容は、いわゆる「巻き込まれ型」の定石通り。しかし、巻き込まれる側が常時ビクつきまくりの小心者であり、強迫観念に駆られた状態での脱出を試みるところが醍醐味となっている。

東京オリンピックに浮かれている太平ムードと、逼迫した状態に陥っている青年の対比が印象に残る。「どこに高跳びしようが、底辺の人間は底辺のまま」を暗示させるシナリオ展開に胸が締め付けられる。
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