Jeffrey

日本脱出のJeffreyのレビュー・感想・評価

日本脱出(1964年製作の映画)
3.0
‪「日本脱出」‬
‪冒頭、色彩豊かな絵。赤いニットを着て洋楽を歌う男。米国文化への憧れを感じる場面。ドラムを叩く兄貴、バンドボーイ、海中、頭上ショット、オリンピック、金庫破り、警報、逃亡…本作は吉田喜重の二度目によるカラー映画で、オリジナル脚本で描く、男女の逃避行物なんだが、何とも皮肉で切ない。まず物語は米国に行きたがってる鈴木やすし演じる竜夫が仲間らと強盗を手伝う羽目になり、うち一人が警官を射殺する。逃げ込んだ競輪場で桑野みゆき演じるヤスエが来て、警官殺しの内田良平演じる郷田が犯す場面で竜夫が射殺する。その間にもう一人の仲間で薬中の待田京介演じる浅川が奪った金を持逃げし、それを竜夫とヤスエが奪う。そこから二人にフォーカスされ物語は皮肉な帰結までの逃避行を淡々と映す。逃げ込んだ建物での仲間割れのシークエンスは緊迫していて見応えある。誰が死ぬのか、女を強姦する男か、兄貴か、巻き込まれた男か、はたまた女か…それに甘い夜の果てにも出て来た競輪場の虚無的な描写が本作にカットとして映る。花火と共に迎えるラスト、終始、鈴木やすしの自らの歓喜を探るべく憧れの国へ渡航する迄の一連の運命、若者の青春を捉えた脱出劇は非常に面白く鑑賞できる。まず本作を観て思ったのが吉田喜重がアクション物を撮ると形而上学っぽくなるんだなと…にしても主人公の竜夫が情け無いのなんのって…まさかコレが戦後の日本の若者像なのか…いやいや止してくれよ。まず強者には逆らえず、何でも聞くが愚痴ばかり言うは、おどおど女々しく、遂には強奪の手伝いまでさせられる始末…なんとも見たくない腑抜けな人間像なんだ。それにヤスエとの逃避行生活をリードする描写も男としてため息が付く。まぁ撮影時期が時期なだけに東京オリンピックの聖火リレーなどが出てくるんだが、これを映画に取り入れたのはなんだか吉田らしいなぁと思う。なによりやはりラストの貨物運搬クレーン宙吊りの結末は凄いよ…まだ言いたい事はあるがネタバレになるから辞めるが…面白い作品だ。あっ!最後に本作で長年の松竹から退社した最後の松竹映画‪で系六本撮り、後に日活で「水で書かれた物語」独立プロ設立し数本撮り、私が彼の作品の中でダントツに好きな「エロス+虐殺」を撮ったATGには五作残している。御存命だがもう映画を撮る事が無いと思う彼の優れた時代の作品は最高だ。‬
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