とねま

ファースト・マンのとねまのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.3
微妙…

宇宙というほとんど前人未到の場を舞台にしていることを活かして映像と音で魅せてくれるか、人間ドラマを描くのか、どちらにも振り切れなかった印象がどうしても拭えない。

最大の減点ポイントは音楽の使い方だと思う。月面着陸のシーンを筆頭に、あまりにもBGMが主張激しすぎる。機器の音声、交信の声とノイズ、金属の機体が軋む音など、ユニークな音が使い放題なのにもかかわらず。すごくもったいなく感じた。逆に発射の時に、道徳的な悪ささえ感じるような暴力的な揺れの描写は豊かなので、その調子で言ってくれればよかったのに。
一応、音がいい仕事していたのは、ジェミニ計画での回転が止まらなくなるシーンと月面に降りる直前。前者は船外ですごくキモい音が聴けて満足だった。後者は、月面で音がないということを淡々と物語っていた。

とはいえ、考えるための素材は多い。
特に冷戦時の宇宙開発は戦争の意味合いもこもっているから、政治的理由でゴリ押された側面があること。そもそも科学技術で国家間の競争するのはどうなのということ。あまりにも多くの人間が犠牲になっていること。「男の冒険」であること。子供が大人の世界のことをなにも理解しない無垢な存在として描かれていること。この「無垢な存在」という描写にこの映画の中ですでに批評的な眼差しが向けられていること(11号発射前夜の別れの場面)。宇宙開発に多大なコストがかかること。マスコミが特有の悪さを持っていること。

特にこの考える要素の中で、「男と女」という軸と「大人と子供」がある。宇宙飛行士という役割と対極にあるのが女の子供であるが、ニールが亡くしたのは幼い女の子だった。彼の中で彼女がどのような存在で、最後のシーンにどう繋がってくるのか。ここにフォーカスできれば、もっとよかったのかもしれない。こってりしすぎるかもしれないけど。
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