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ファースト・マンのsnowwhiteのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.0
🎦ラ・ラ・ランドのデイミアン・チャゼル監督が🎦ラ・ラ・ランド後始めて撮った本作。人類が始めて月に降り立ったあのアポロ11号、ニール・アームストロング船長の物語だ。ドキュメンタリーのように忠実に描いてあって🎦セッションや🎦ラ・ラ・ランドを観てから本作を観た人は作風がかなり違うので戸惑うてあろう。

ニール・アームストロング自身が出した回顧本や彼の回りにいた人達が出した出版物を元に描かれた脚本は余計なものをすべて削ぎ落とし過剰な演出を一切しないという手法だ。それだけにドキュメンタリーのように当時の様子が良く分かるし、まるでそこにいるかのような臨場感がある。



(ネタバレあります。)
この映画を見て、宇宙飛行士の訓練中にも沢山の宇宙飛行士が亡くなっていたことを知った。ロケットの実験で沢山の失敗があっただろう事は分かっていたけれど訓練中にも沢山の人が亡くなっていたなんて想像もしていなかったのでビックリしました。

宇宙飛行士が打ち上げの前の最後の実験で爆発が起き、ニールと中の良かった3人の飛行士が亡くなるシーン。衝撃でした。火だるまになったのに事故原因の調査の為、事故後も直ぐ助け出さなかった話に胸が詰まった。ニールの受けた衝撃。仲間を失った衝撃もさることながら、それでもすぐ宇宙に向かって飛び立たなくてはならないのだ。恐い。

火だるまになった宇宙飛行士の妻の衝撃と悲しみ。その妻と社宅で仲が良かったニールの妻の衝撃。自分の夫もそうなるかも知れないという恐怖。夫が死んで妻と子供が残されすぐ社宅を出ていかなければならなくなった人を見たら余計に恐怖が実感として湧いてくる。それでも夫に行かないでとは言えない妻。不安と恐怖でいっぱいだ。

ニールはいよいよ立つという日になっても子供と向き合おうとはしない。もう荷造りは済んでいるのに、荷造りしている。

妻は言う。「子供たちに何か言ってあげて。」
「今荷造りをしている。」
「荷造りは終わってるでしょ。子供たちと話して!」
「仕事しているんだ。」と今度は書類の整理をしようとするニール。妻は書類を投げ捨て「戻ってこれる可能性は?」「帰ってくるさ。」「帰らない可能性もあるでしょ。子供たちに何か言ってあげてっ!」「子供に何て説明するの?ずっと堪えてきたわ!でももう無理!私が言うのはいや!あなたが自分で言うのよ。帰れないかも知れないって。子供たちに心積もりさせてっ!」

奥さんの気持ちが痛い程突き刺さる。宇宙に飛び立つ夫を送り出すだけでも大変なのに、同じ社宅で家族ぐるみで仲の良かった宇宙飛行士が3人も死んだ後だ。

この後子供たちとニールが話すシーンがあったがちょっとイラっとした。奥さんにあれだけ言われたのだからもう少し腹をくくって子供に向き合って欲しかった。もしかしてこれが最後の言葉になるかも知れないのだから残された子供が前を向いて生きていけるような言葉を言ってやって欲しかった。国の一大イベントの責任者にしては情けない。もう少し困難から逃げずに立ち向かう姿勢が欲しかった。

【ロケット打ち上げ、飛行のシーン】
物凄く迫力があった。まるで自分も一緒に載っているかのよう。

閉所恐怖症な私はまず、あの狭い船内にヘルメットが無理。閉じ込められてる感が恐くてしょうがない。狭いエレベーターや窓の無いトイレとか全部無理。精密検査のMRIやCTの機械の中に入るのも恐い。事情を話して緊急ベルを持たせて貰って耐えられなくなったら検査中止のベルを鳴らす。
あのすごい画面の揺れも恐怖だった。三半規管が弱いのか子供の頃から乗物酔いをする私はあの酷い揺れに耐えられなかった。画面を見ているだけで気持ち悪くて酔いそうだった。

因みにニールも子供の頃から乗物酔いする体質だったとか。よくまあ宇宙飛行士になれたものだ。

それだけにヒューストンとの交信がリアルだった。何か異常が出てて「これが悪いのか?」「ここをこのようにしたか?」返事がない。「このようにしたのか?」とヒューストン。何度も同じ事を聞かれるがあまりにも揺れがひどく飛行士達は答えられない。「40秒程で気を失う(と思う)…。」

ヒューストンでは
「気を失ってしまうぞ。大変だ。」と大騒ぎになるがどうすることも出来ない。

打ち上げの直前に実験で同じように異常が出て爆発して3人の仲間が死んだばかりだ。今また異常が起こって爆発するかもしれないと思うだろうから恐怖は倍増する。

本当に恐いシーンだった。ホラーやスプラッターやグロは全く問題なく観れる私ですが、この映画は本当に恐かった。臨場感が半端なかった。


期待していたデイミアン・チャゼルの映画とは違ったけれどとても良かった。今後も期待して観ていこうと思える一作だった。臨場感だけでなく、登場人物達の心の動き、葛藤もよく描かれていたと思う。
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