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ファースト・マンのarinのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.7
緊迫感あふれる宇宙ミッション、ニール・アームストロングの人間像に迫る

「宇宙開発モノ」の金字塔が新たに誕生した。
監督のデミアン・チャゼルは、「セッション」「ラ・ラ・ランド」と音楽をテーマにした作品作りを続けてきた人物である。今作は打って変わって、宇宙開発、それも月世界に最初に足を踏み入れた実在の宇宙飛行士、ニール・アームストロングが主人公である。

宇宙開発モノといえば、近年では「ドリーム(2016)」が話題になったが、なんといってもマーキュリー計画を描いた「ライトスタッフ(1983)」が有名である。「ライトスタッフ」は宇宙飛行士を英雄的に、その家族を献身的に描いていたが、「ファーストマン」ではより生々しく宇宙飛行士とその家族の実情を描いている。

宇宙飛行士というものは決死の仕事であり、一歩間違えば命を失う恐怖と渡り合っていかなくてはならない。ミッションの途中で多くの仲間が命を失う。また、巨額の国家予算を預かっているというプレッシャーもある(宇宙開発の巨額の予算があれば、飢えや貧困から多くの人が救えるのだ!)。重圧がニールを襲う。

家族もまた、ニールに振り回される。夫婦関係、ついには親子関係にまで亀裂が生じてしまう。ニールは仕事に、家族にとどう向かっていくべきなのか、プレッシャーのなかでその答えを見つける。

テーマ性もさることながら、やはりこの映画の魅力は宇宙開発のシーンである。宇宙シーンは見るものに緊張を強いる。冷たい金属のポッドに乗り込んだときの閉鎖感。耳をつんざくブザー音。管制塔の打ち上げ秒読みは死へのカウントダウンのようだ。だが、プレッシャーを乗り越え、ミッションを達成したときの感動は倍になって返ってくる。

見る前は「宇宙開発モノとか、監督は畑違いの分野に手を出しちゃったんじゃないの?」なんて意地悪に考えていたのだが、いい意味で期待は裏切られた。ごめんなさい、チャゼル。
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