ももみ歌と映画とアート

冬の旅のももみ歌と映画とアートのレビュー・感想・評価

冬の旅(1985年製作の映画)
4.0
女性ホームレスが死を迎えるまでの道行と、彼女に出会った人々へのインタビューをドキュメンタリータッチで描く(フィクションと思います)。

これは冷ややかで強烈でした。ホームレスのモナは若く魅力的ですが「楽して生きたいの」が口癖で、不潔な身なりも怠惰な生活も改める意思はありません。前半は彼女の非が目立ちますが、徐々に出会った人々の方のエゴ、偽善や冷酷さがクローズアップされます。出会った人々同士がラスト近くで繋がっていくにつれモナの運命も急激に悪化していく(僅かな希望も絶たれる)展開は恐ろしいほどでした。

伝染する病に侵された(侵されているかもしれない)スズカケの木が随所に出てくるのも印象的でした。

最期にモナは何を思ったのか…後悔や反省はなく「どうしてこうなった?」の疑問だけがあったのではないかと。そして怠惰であるが故に、出会った人々への感謝も恨みも特に無かったのでは。

人間の負の側面を突きつけているような作品でした。今スターチャンネルでアニエス・ヴァルダ監督特集をやっているので、他の作品も見てみたいと思います。