りっく

冬の旅のりっくのレビュー・感想・評価

冬の旅(1985年製作の映画)
4.2
アニエス・ヴァルダのドキュメンタリストとしての強靭な視線は、対象を裸にして凝視し、ときに冷たいニヒリズムに接近することも辞さない。本作はフィクションではあるものの、ヒロインを見つめる眼差しに同情的な甘さは一切ない。主人公の生き方を肯定も否定もせず、裸のまま観客の前にごろりと投げ出してみせる。

彼女は自由の体現者であると同時に、死に至る孤独という代償を支払う犠牲者であり、誇り高き単独者であるとともに、悪臭に満ちた最底辺の獣である。その不可解な人間性をサンドリーヌボネールが内面を顕にすることなく、人間としての鬼気迫る存在感を画面に刻みつけ、確かに生きていた証を刻印してみせる。
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