のんchan

冬の旅ののんchanのレビュー・感想・評価

冬の旅(1985年製作の映画)
4.0
アニエス・ヴァルダ作品鑑賞10本目。
観たかったのが季節外れでようやくU-NEXTにやって来た。

ヴァルダが50代半ばでの作品だが、制作のキッカケは憲兵から聞いた"リンゴの樹の下で凍死した放浪者の青年の話"だった。そこからイメージを膨らませロケ地巡りをしていた時に、ヒッチハイクで若い女性を拾った出会いがあった。
聞いた話、実際の出会いから、この作品のキャラクター、18歳の少女モナが生まれたらしい。
ドキュメンタリー作家としての経験、手腕をふんだんに取り入れ活かしている。モナの若さゆえの「楽しながら生きたい」という自由と孤独を描き出しているヒューマンドラマ。


オープニングはフランスの片田舎の葡萄畑の側溝で凍死している少女が発見されるところから始まる。少女モナが死に至るまでの数週間の足取りを、出会った人々が証言インタビューしている風にして辿っていく。

寒い冬空の下、テントを張り何日も風呂にも入らず臭っている若い少女は様々な出会いがある中、優しい男もいたが、どちらかというと汚い女はあっち行けという感じ。女性から助けてもらえていたけれど、男女では見る目が違うというのも明らか。

放牧酪農家がボソッと人生を説く
「孤独というのは身体も蝕んでいく」とは正にその通りと思えた。

またモナを車で拾ったプラタナスの研究をしている女性教授は、モナに親切に食べ物を与えお金を握らせてくれる。そのあと自分が感電死しそうになった時、モナを走馬灯のように思い出しどうにかもっと手厚くしてあげるべきだったと後悔する。
この教授はヴァルダ自身を重ねているように感じた。裕福で身綺麗にしている教授の赤いマニキュアの爪と何も持たないモナの真っ黒に汚れた爪の対比が印象的。

ヨランド・モロー扮する家政婦の雇い主の盲目の老婆とモナがコニャックを飲みながら楽しそうに笑い合うシーンが心から楽しんでいるようでお気に入りのシーン。


とにかく無愛想で汚ったないアウトサイダーなモナ役を17歳で演じたサンドリーヌ・ボネールは、モーリス・ピアラ監督の『愛の記念に』でデビューし、これが2作目とは信じ難い恐ろしいほどの女優魂を魅せている。
ボネールはこの作品の後しばらくヴァルダとブランク期間があったものの、再び『百一夜』で声を掛けてもらい、その後も付き合いがあり、亡くなる2日前にもヴァルダの家で話した関係だった。
(全く関係ないけど、ウィリアム・ハートとの間に娘が一人いるんですね、調べて知ってビックリ)
実力派女優なのは間違いない。
のんchan

のんchan