出産を間近に控えた妊婦が、内なる我が子の声につき従って次々と殺人を犯すホラーサスペンス、風のコメディ…というお話
映画界広しといえども、妊婦が殺人鬼と言うお話はそれほど多くないでしょうし、それがまたまもなく産まれようとしている胎児の声に従うというお話は今まで聞いたことがありませんでした
それにしても妙にリアルなお腹だなあと思いきや主演はまさかの妊婦さん、しかも監督までやってらっしゃる
妊娠中は胎教と言う名目のもとホラー作品を見ないようにしようという風潮もある中でこれはすごい、とはいえ妊娠中に仕事を失って復帰できるかもわからないという現実を直視した結果らしいので、どこの国でも妊娠・出産は単純に喜ばしいことばかりでもないようです
しかしそんな社会問題はおくびにも出さず、男の家で殺しをすれば年老いてぼけてしまわれているお母さまが起きてきてしまい優しく寝かしつけたり、ボクサーを殺そうとすれば相手がボクシンググローブを着けて臨戦態勢で待ち構えていたり、もみ合う中でうっかりボクサーが腹を殴ってしまったり、いくら殺人鬼とはいえ相手が苦しみだしてしまったため介抱しようとしたら刺し殺されたり、また別の家では殺しはしたものの警察を呼ばれてしまっていたため犬用の出入り口から這うように逃げ出したり、その際にちょっと強めにお腹を打ってしまったり、迂闊と粗忽を絵に書いたようなドタバタがふんわりとした笑いを誘うことでしょう
妊婦がもつ固定観念を捨てきれず、倫理的にモラル的に楽しんでいいかどうかわからないあなた、監督自らが「妊婦だって暴れたり人を殺したくなるときだってあるんだよ」と言ってくださっているので、安心して笑い飛ばしましょう
