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プリベンジのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

プリベンジ(2016年製作の映画)
3.1
タイトル『Prevenge』は『妊娠pregnancy』+『復讐revenge』をくっつけた造語。
妊婦が殺人鬼。

アリス・ロウは監督/脚本/主演の3足の草鞋を履いてこの作品を制作。
しかも本人が本当に妊娠中(妊娠後期、安定期だったろうとは思う)に約2週間で撮影。
これが監督デビュー作。

クライミング事故で夫を亡くした妊娠中の未亡人ルース。
彼女の膨らんだお腹からは中にいる胎児が話かけてくる。
(あいつらに復讐するのよ、パパのために)
その声に従って彼女はクライミング事故に関連したひとりひとりを殺害してゆく……というスラッシャー。

監督が言うには『妊娠、出産の暴力的な面と、穴から生物が出てくることの実存』を語りたかったとあり。

嚙み砕くと、妊娠期間〜出産、そして産まれたら子供は門道無用で自身のキャリアや時間や若さや自由を奪われることへの社会の仕組みや周囲への理不尽さのことらしい。

監督が、妊婦に対する社会のまなざしをターゲットに投影している部分があると思うのですが、
2人目のアフロDJ男は全方位でクズ。
女性にとって不愉快なタイプ。
ゲロった口でキスした場面ではルースでなくても殺意がわいたwww
4人目はターゲットを殺るためにジョシュという男性まで巻き添えに殺害。
しかし彼は親切で、彼女に傾聴し共感してくれたりした……後々殺害を後悔。

女性側には更に辛辣な演出が。
3人目のバリキャリの女性。
ルースが仕事が欲しいのだと言うと妊婦ということで採用を断られる。
5人目一般人の女性。子供への寄付をお願したら「他に寄付したから断るわ。スポーツ振興に寄付したわよ」
「子供に興味が無いのね」

ルースは最後にクライミングの引率者を殺害しようと乗り込んだものの、破水し、また彼には妊婦の妻がいることが分かり彼女は躊躇う……そして急遽帝王切開で出産。

生まれた子供は自分を操るエイリアンではなく、普通の赤ちゃんだと知り、復讐殺人欲求は胎児の声のせいではなく、自分の本心だったと気がつく。

クライミング事故は突発的なアクシデントが起こり、トロッコ問題みたいな選択になったんだと思う。

ラストシーンについては、本当に殺したかったのは夫?(時折挿入されるクラシック映画は不実な男女は裁かれるという話)とか、
やはり最後のあいつは殺してやる!と狂気が起こったのか、
そこに見えているのは幻覚なのか『?』が盛大に飛びましたが、ハイテンション時のルースの表情がインパクトがあり、それで幕切れなのでイヤオチとしては良いかも知れない。
個人的には良作でした。