KnightsofOdessa

ポンデザールのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ポンデザール(2004年製作の映画)
4.9
[芸術とあなた、芸術と私、あなたと私を繋ぐ橋] 99点(OoC)

大好き。MUBIに登場したウジェーヌ・グリーン特集二本目、長編三作目。彼はナターシャ・レニエが好きらしく、何度も彼女を使っているのはファンとして嬉しい限り。前作『The Living World』同様、ほぼバストショットと過剰なまでの切り返しだけで成立させた芸術問答。音楽と沈黙、楽譜だけでは音楽として成立しないが、一度形になれば心に残り続ける。それを形にする者。名前を呼ばれすらしない指揮者、圧迫的で尊大な音楽家は音楽に意味はないと説いて現代音楽を見下し、それに反対したサラは魂で歌い上げ、パスカルは面と向かって抗議する。名も無き者の叫び、国家なきクルド人の見知らぬクルド語の歌。バロックとロック。過去と現代。数多くの要素が一見バラバラのように見えながらも一つの点に収束していく。芸術の神秘の話を神秘的芸術で語る。そんな映画。

自由に生きたいというぐうたら修士学生の青年パスカルは虚無に堕ちたせいで彼女に捨てられ、指揮者にボコボコにされた自信を失ったオペラ歌手サラはそれを苦に自殺する。交わるはずもなかった2つの人生が、それぞれの虚無と絶望によって交錯し、自殺を図ったパスカルはサラの歌声に救われる。パスカルはサラの歌声に取り憑かれたように彼女の影を追うが、既に亡くなった後だった。しかし、彼女の歌声は残り続け、彼はついに"橋"(ポンデザール)の上で彼女に出会うことになる。ポンデザールとは"芸術の橋"という意味であり、そのまま芸術とパスカル、芸術とサラを結び、三途の川を跨いで黄泉の国と現世を繋ぎ、歴史を繋いで、サラとパスカルを繋げるのだ。最高すぎた。特にこのサラとパスカルが出会ったポンデザールのシーンは素晴らしすぎた。

悪夢から目覚めたナターシャがクマのぬいぐるみを抱きしめるシーンの可愛さは異常(私もあんな感じで…ゴニョゴニョ…)。
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