大好き。MUBIに登場したウジェーヌ・グリーン特集二本目、長編三作目。彼はナターシャ・レニエが好きらしく、何度も彼女を使っているのはファンとして嬉しい限り。前作『The Living World』同様、ほぼバストショットと過剰なまでの切り返しだけで成立させた芸術問答。音楽と沈黙、楽譜だけでは音楽として成立しないが、一度形になれば心に残り続ける。それを形にする者。名前を呼ばれすらしない指揮者、圧迫的で尊大な音楽家は音楽に意味はないと説いて現代音楽を見下し、それに反対したサラは魂で歌い上げ、パスカルは面と向かって抗議する。名も無き者の叫び、国家なきクルド人の見知らぬクルド語の歌。バロックとロック。過去と現代。数多くの要素が一見バラバラのように見えながらも一つの点に収束していく。芸術の神秘の話を神秘的芸術で語る。そんな映画。