半兵衛

笑う男の半兵衛のレビュー・感想・評価

笑う男(1928年製作の映画)
4.3
不気味な映像といい怪奇映画のような雰囲気に満ちているが、実際は顔はつねに笑っていても心は自分の顔について悩み傷つく心優しい主人公の人間ドラマ。サーカス団の仲間が彼の顔に理解があり自分を愛する女性が盲人のために余計自分が常人ではないことに苦しんでしまうのが切なく、そんな青年が「自分の顔を笑わず愛している女性」がいることを夢見て騙されてしまうのが…。

親の罪に連座して強制的に顔を手術されて笑っている顔立ちにされたグウィンプレンをコンラートー・ファイトが好演、笑った顔のなかから悲しみや怒りをにじませる演技が凄い。

主人公が働く見世物小屋のいかがわしい出し物が凝っていて楽しい、そして小屋で下品に騒ぎ回る庶民と貴族たちのエレガントな暮らしが上と下の対比となって二つの世界を行き来するグウィンプレンの数奇なドラマを盛り上げる。

工夫されたカメラワークや特殊撮影も見所で、観覧車の中から外の風景を映したり終盤の建物の窓の出っ張りにしがみついている主人公が落下して下にいる民衆たちのもとへ落ちるイメージショットが鮮烈。

ある人物の思惑により主人公が貴族となるも顔のために笑われ、愛するヒロインを傷つけられた暴走する後半の展開は尊厳を踏みにじられた人間の怒りの爆発が生々しく伝わってきて圧倒された。そしてそんな主人公の感情を汲み取り奇跡を巻き起こす見世物小屋で飼われているワンちゃんの水浸しになりながらも甲斐甲斐しく活躍する勇姿に感動。

純真な盲目の女性と退廃的な色気を放つ貴族の娘、二人のヒロイン像も印象に残る。
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