TaiRa

笑う男のTaiRaのレビュー・感想・評価

笑う男(1928年製作の映画)
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ビジュアルがジョーカーの元になったというのは知ってたけど、内容は知らなかった。ユゴー原作の純愛モノ。

いわゆる醜男と美女の恋愛モノの一つで、ユゴーにとっては『ノートルダムのせむし男』路線。王室の政争に巻き込まれる形で口を裂かれた子供が孤児の女の子と共に成長して愛し合う。青年はその容姿を見世物にして人気を博す。女児は盲で成長しても青年の歪な顔を見ていない。青年はコンプレックスから彼女と結ばれる決心がつかない。そんな青年は再度政争に巻き込まれる。ドイツ表現主義の作家だったパウル・レニがハリウッド(ユニバーサル)に渡って作った内の一本。当時としては大作らしい。ホラー映画ではないが造形美術の点では後のユニバーサルホラーの礎になっていたりもする。ジャンルとしては複合的で、喜劇でもありメロドラマでもありアクション映画でもあり政治劇でもある。主演のコンラート・ファイトの芝居が良くて、フリークスの悲哀を見事に表現してる。ヒロインのメアリー・フィルビンも無垢な美少女が似合う。青年を誘惑する女公爵役のオルガ・バクラノヴァがマドンナに似てた。後半は群衆を動員しての剣戟ありサスペンスありのチェイスシーンでテンション上げてく。困った時は大体、犬が助けに来てくれるワンちゃん頼もしい映画。笑いながら涙を流すというピエロの抽象化されたビジュアルを人間の顔でやってみると、やっぱり凄い強力なビジュアルになるなと改めて。
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