かじドゥンドゥン

マッドバウンド 哀しき友情のかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

4.0
1938年のアメリカ。農園では白人地主と黒人労働者との間に歴然とした身分の差があった。そして第二次世界大戦の勃発で、白人も黒人も等しく祖国のために出征した際も、トイレや輸血は別というように、差別は続いた。とはいえ、最前線で支え合い、同じ地獄を見た兵士個人の間では、肌の色を越えた友情が成立したし、解放のために乗込んだヨーロッパでは、黒人に対する白人の態度ははるかに寛容であった。

大戦中、戦車を操作しドイツ解放に貢献した黒人青年ロンゼルは、両親と兄弟が待つ農園に帰還。しかし多大な武勲をあげて誇らしげに凱旋した彼を待っていたのは、戦前と変わらぬ苛烈な迫害だった。同じく帰還兵で、農園ではロンゼルの使用人一家の次男であるジェイミーは、ロンゼルに偏見なく接し、友情を取り結ぶが、周囲の目は冷たい。

そして或る日、ドイツ人女性からの手紙で、白人女性がロンゼルの子を宿したことが村に露顕すると、KKK(白人至上主義者の集団)がロンゼルをリンチする。彼を救おうとしたジェイミーは、返り討ちにされると、ロンゼルを救う代わりにどの部位(目、舌、金玉etc.)を選ぶよう強制され、屈辱の中、舌を指定。ロンゼルは舌を切り取られ、気絶した状態で家族に発見された。

悲惨な戦場を経験した者とそうでない者との壁。精神的な後遺症に苦しみながら、身を寄せ合い支え合って生きて行こうとした二人の男、その友情を引き裂く人種差別。

長い物語は、舌を失ったロンゼルの語り(ナレーション)に引き取られ、彼がドイツで愛する女そして娘と再会するシーンでもって、「ハッピーエンド」として締められるが、それはアイロニーでしかない。