グラッデン

勝手にふるえてろのグラッデンのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.3
「拗らせた大人の不器用な恋愛模様」というのが日本のドラマ・映画で徐々に鉄板になる認識を強く感じさせる作品でした。

昨年放送したドラマ『逃げ恥』はプロ独身と妄想女子の大人びてない恋愛、本年公開された『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』は「奥田民生のような成熟した大人」に憧れる35歳の主人公・コーロキのボーイ・ミーツ・ガールを描かれています。

大上段の目線で語ると、こうした作品・人物が脚光を浴びるのは、わが国における未婚率の上昇に伴うソロ活動者の拡大・定着という背景が影響していると思います。わが国の未婚率は右肩上がりに推移しており、5年ごとに実施される国勢調査に基づく生涯未婚率の推移も直近の調査は高い伸び率を記録しています。本作を含めて、高い生活力・スペックを誇る「独身のプロ」は多くはいないかもしれませんが、共感を得る下地は確実にあると思います。

偶然なのかもしれませんが、上記の作品に登場する登場人物、本作の主人公・ヨシカを支えるのも<妄想力>でした。彼女は、中学生の頃に憧れていた同級生・イチとの限られた交流を脳内補完し、何度も再生=シミュレーションします。そして、彼女にとっては、社会人としての退屈な日常よりも、妄想を原動力とする感動や興奮に満ちたイチとのシミュレーションの方がリアリティある魅力的なモノに変わっていきます。ポストモダンの評論で言うところの「ハイパーリアル」の領域ではないかと(汗)

本作の重要なところは、ヨシカがハイパーリアルを体現しながらも現実と向き合い、脳内で再生し続けていた、心の声をリアルに叫び、もがき続けるところです。
妙に冷静になったり、異様なまでに自棄を起こしたり、とにかく感情の乱高下が凄かったです。荒々しいけれど、面白おかしくも見えて、最後には共感にたどり着く。鑑賞者としても次第にシンクロしていく感覚がありました。原作が相当尖っているのもよく伝わる内容なのですが、パワープレーを駆使した映像作りは賛否あるかもですが、個人的には楽しめました。今年見た日本のドラマ・映画で最も『ラ・ラ・ランド』感がありました(笑)

そして、大いにアピールしたいのは、ヨシカを演じた主演・松岡茉優さんの魅力が大爆発していたことです!大変素晴らしかったので個人的に整理したはずの年間ベスト映画・ベストガールに入れたいと思うほど(汗)
松岡さん自身、ハロプロファンとしてアレすぎる側面があるので、ハマりすぎていたところはありますね。あまりに愛おしかったので、また見に行きたいと思わせる(本性を滲ませる)怪演技でした。

今年最後の映画鑑賞でしたが大いに笑って心が勝手にふるわされた。
年末年始におススメの1本です!