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Where is Kyra?(原題)のSY3KRのレビュー・感想・評価

Where is Kyra?(原題)(2017年製作の映画)
4.0
ナイジェリア出身のフォトグラファーとして活動を続けてきたアンドリュー・ドンスム監督が手がける、ミシェル・ファイファー主演の人間ドラマ。

病気の母を介護しながら質素に暮らすキーラだったが、ある日母を亡くしたことで精神的に追い詰められる。悲しみに暮れるキーラはなけなしの小銭を手にバーへと繰り出したが、そこで1人の男性ダグと出会い恋に落ちた。しかし貧困に苦しむ彼女は、いよいよ大胆な手段に出て…というのが大まかなあらすじ。

NYのブルックリンといえば成功者の住む大都会のイメージだが、ここまで貧富格差があることには驚かされた。友人も親族もおらず一人で介護を続けるキーラには同情の念が込み上げるものの、やがてそれは憐れみへと変わっていく。

キーラはとてつもない承認欲求の塊だ。自分の価値を見誤り、取るに足りないプライドだけを抱えて生きてきたのだろう。だからみっともない見栄に縛られて生活水準を下げられない。こういったタイプは周りに必ず1人はいるが、普段なら客観視できるはずの痛々しさが、擬似体験している錯覚に陥るほどの生々しさで描かれていく。

監督のこだわりは容赦がなく、BGMも皆無の乾ききった、そして的確な描写でキーラのこれまでの人生を見事に炙り出す。そしてそれを倍増させたのはミシェル・ファイファーの老いも醜さも全てを曝け出した、圧巻のパフォーマンスだ。個人的には彼女の名演だけでも十分に見る価値のある一本だと感じる。

本作は日本での劇場公開・配信にも至っておらず、海外のサブスクを使用する・DVDを輸入するなどの手段がないと鑑賞できない。非常に残念である。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:81%
・観客支持率 :50%
「本作は、ミシェル・ファイファーの魅力的な演技と、それに見合った辛辣なストーリーで成り立っている。」
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