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メゾン・ド・ヒミコのCinemanのレビュー・感想・評価

メゾン・ド・ヒミコ(2005年製作の映画)
4.0
『メゾン・ド・ヒミコ』
犬童一心監督
2005年公開

【Story】
小さな塗装会社の事務員として働くだけでなくコンビニでアルバイトしても借金を返済しきれないので風俗のバイトを探している女事務員吉田沙織(柴咲コウ)。
ある日、日曜日だけ養老院でアルバイトをしませんか、お金が必要なんでしょとすすめる男(オダギリ・ジョー)が現れました。

その養老院の経営者は子供の時にカミングアウトして突然自分と母親を捨てて銀座でゲイバーを始めた沙織の父親だ。
父親は歳をとり認知症を発症したこともあり数年前に大人気だった新橋コリドー街のゲイバーを引退し、海辺の小さなラブホテルを買い上げてゲイ専門の養老院を運営しているのだった。

高額の謝礼にひかれて心の底から憎んでいた父親のもとで働くことを決めた沙織は父親や老残を晒した数人のゲイに囲まれて仕事を始める。
時間がたつに連れて一人ひとりのゲイたちと親しくはなったものの自分と母親を捨てた父親に対する沙織の憎悪は変わらなかった。
ある日沙織は壁に飾ってある父親の過去の写真の中におしゃれした母親が写っているのを見つける・・・。


【Trivia & Topics】
*柴咲コウ。
キリッとした目付きで眉間にシワを寄せて上目遣いに相手をにらみつける表情がとってもよく似合います。
ノーメイクで出演していることもあって小さな塗装会社で働いている潔癖症の女事務員役がリアルです。

*オダギリ・ジョー
どんな作品に出演してもひょうひょうとしたしぐさが持ち味ですが、本作品では自分の父親のような年齢の男ヒミコの恋人となり優しく見守る姿が素敵です。

*田中泯
世界的な舞踏家です。2002年『たそがれ清兵衛』、2004年『隠し剣 鬼の爪』と2本の山田洋次監督作品に出演し、映画出演3作目にして初の現代劇です。
沙織の前に初めて登場したヒミコの佇まいが素晴らしい。年老いたゲイですが凛とした佇まいはさすが舞踏家です。

コントラストの強いこのキャスティングが見事です。

*ゲイさまざま。
養老院に暮らす個性あふれたゲイたちが見ものです。
声を出さなければ素敵なロマンスグレーに見える者、
ベタベタの厚化粧で見るからに老残オカマ然としている者、
ビジネスマン然としている者、
肉体を誇示するマッチョな者、
ハゲで女装している者、
でもみんなに共通しているのはとてつもなく優しいということです。ストレートど真ん中で潔癖症の沙織には汚らわしい存在です。
最初はかれらに対する嫌悪感を顔に出していた沙織も朝から晩まで冗談を言いながらじゃれあっているオカマたちの優しさに気づかされます。

*見事な展開。
若い時は派手に楽しく暮らしていたゲイたちの老後。
今後今まで以上にリアリティをもって語られるであろうこのシビアな問題を時にはユーモラスに描いたこの映画の脚本は昨年末話題になったテレビドラマ「エピウス」と同じ渡辺あやさんです。

*登場人物たちの心情にみごとに共振した音楽。
アニメ映画『源氏物語』以来18年ぶりに映画音楽を手がけた細野晴臣の音楽が物語に深みを与えています。


【5 star rating】
☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:見事な作品
☆☆☆☆ :面白い作品
☆☆☆  :平凡な作品
☆☆   :残念な作品
☆    :退屈な作品 
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