ヨシイコウタ

メゾン・ド・ヒミコのヨシイコウタのレビュー・感想・評価

メゾン・ド・ヒミコ(2005年製作の映画)
3.7
オダギリジョーが美しい。それは「映画のなかで生きている」感じというか、観ているとある種のリアリティみたいなものを欠いているような気すらしてくるんだけど、たまにめちゃくちゃ人間臭いところが見えたりしてとても面白かった。「完成されてる」とか「整いすぎてる」とかそういう感じがどういうわけか全然しないんだけれど、それがかえってつかみどころをなくしていて、観る側を置いてけぼりにするからこちらは不安になって惹きこまれてしまう。観終わった後も彼の残像が頭のなかにぼんやり残る。

柴咲コウもとてもよかった。仏頂面がチャーミングだし、無垢で素直な佇まいに自然と好感を持ってしまう。ゲイの入居者たちを蔑視するような発言を何度かしてはいるんだけど、決して彼女がそういうものの象徴として画面に映るわけではなく、むしろ彼女の怒りとか孤独とかやり場のない感情をひしひしと感じさせるあたりが何とも独特でとてもよかった。

他の演者もひとりひとり個性が立っていて、サオリと同じようにちょっとびっくりしてしまうような人もいるんだけど、誰一人として浮いてないからある意味安心して観ていられる。観ているうちに不思議と愛着もわいてくる。メゾン・ド・ヒミコの心地よい空間が画面越しに伝わってくるようで、見ていて楽しかった。ただ、途中ででてくる少年だけはあんまり好きじゃなかったかなあ。必要な要素だったかもしれないけど、ちょっとバランスを崩してしまっているような印象。

全体的に物静かな雰囲気のなかで、賑やかに音楽が流れるクラブかなんかのシーンがまたよかった。みんなで踊っているところは知らぬ間に見入っていたし、映画の好きなシーンのひとつになりました。