かなみ

コロンバスのかなみのレビュー・感想・評価

コロンバス(2017年製作の映画)
3.8
土地を作るのは自然か、建物か、人か、

ジンとケイシーが出会うまでの徹底した定点ショットの嵐からのやや長いパンショット、まず彼らが出会い、互いを知り境界線を無くすところからはじまる。
その土地をどのようなものが眺めるとき、異邦人の存在は不可欠である。その者が侵略者なのか、新しい共同体のメンバーかは、人ではなく土地が決める。
ジンとカサンドラは、死と生が縦断しているが、2人はどちらも親に縛られる。先祖崇拝の意識や母権社会は親への定住を意味する。周りに草木が茂ろうとも雨が降り続こうとも、建物が地に縛られるように、彼らの自由は見えやしない。
結果的に、土地にも人にも愛着があったカサンドラは去り、人にも建物にも頓着の無いジンはコロンバスに残る。カサンドラにとって、それが救済であるかは二の次なのである。ひとえに、彼女は強烈な帰属意識から解放されたのだ。

メタリックで幾何学的な印象をどことなく受けるけれど、霊的な精神性も強く感じられるのは何故だろうか。自然とモダニズム建築の混在する街。水のせせらぎや日の光、木々のさざめきがとても穏やかに閉鎖的な世界を覆っているように見える。ジンの父が雨を眺めていたのは、建築物から離れた自由な自然への、わずかな憧憬からだろうか。

すごく邦画っぽい映画だという印象 激情も疾走感も無い。静けさと情緒を重んじているような映画だと思った。調べたら監督は小津安二郎の熱烈なファンらしい。
直線的な建築物のショットはどれも画になる。とても綺麗だった。
かなみ

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