KnightsofOdessa

コロンバスのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

コロンバス(2017年製作の映画)
5.0
[息を呑むような映像美で語る失った魂の欠片を探す旅路] 100点(オールタイムベスト)

この時期になって滑り込みで今年度最高の映画に出会えたことに感謝したい。簡潔な題名と"コゴナダ"という怪しい響きを持った監督名に惹かれて鑑賞したわけだが、私の鼻のセンスの良さは私の美的感覚が全て依存しても構わないくらいにまで成長したんだなぁと感動もひとしおである。そんな自画自賛はさておき、こんな素晴らしい作品が映画祭で何度か上映されただけってのはおかしい。是非とも劇場公開してくれ。私は何回でも見に行くぞ。

まずコロンバスという都市自体が主人公格に押し上げられている画作りが素晴らしい。全くもって無駄のない静謐な映像美に何度か無意識に涙腺が崩壊していた。ケイシーが"非対称"と言う割に人物を真ん中において対称性を意識させる映像、伸びやかな奥行きを感じさせる建造物、一枚の画で切り返しが完成する会話、まるで映像の教科書だ。画作りに併せて建築を語らせるという反則的な物語を持ってくることで、我々は映像の持つ力を音でも手に入れることができる。

建築家の父が昏睡状態になったため韓国からコロンバスを訪れた息子ジンとコロンバスで司書をしながら麻薬中毒から回復した母親の世話をするケイシー。ジンは父親との確執から建築を理解せずにコロンバスに留まることを嫌がり、ケイシーは母親と暮らすことに安寧を見出してコロンバスを離れることを嫌がる。韓国系の男性とコーカソイドの女性。どこまでも対称的に配されたふたりの登場人物は奇妙な運命に身を任せるように遠い昔に失った魂の欠片を探し求めるように互いを引き寄せ合う。物語的にも互いに独り身である二人に対して自然な形で異性が近くにおり、推進力として申し分ない。

コロンバスを巡る確執を抱えたふたりはケイシーが家から離れてジンの嫌いな自宅で過ごすことで癒やされていき、それぞれが新たな一歩を踏み出す。最高の2時間だった。
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