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サラブレッドの海のレビュー・感想・評価

サラブレッド(2017年製作の映画)
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呼吸にも瞬きにも行き渡った真っ白な緊張に、垂れて伝う真っ赤な衝動。インターネット上で毎秒繁殖する悪意から出た言葉は今や、紙の本に語られた愛の数をも上回る。ぐちゃぐちゃに歪んだ正義や幸福や悲痛の文字。才能もタフさも持ち合わせていない悪が暴かれる時の、ごめんなさいという逃げ道、ここまで薄っぺらな言葉の中にも焦り、不安、不満に後悔まで幾つかの「清く正しい」感情が含まれているとされる。まともじゃない。わたしたちが感情と呼ぶものから、ミステリを作り上げるだけの深みが一切消え失せてしまった時、それをなお感情と呼ぶだけの人類への信仰は、わたしには無い。感情が無いのだと自称する少女からは、諦めも絶望も感じられた。あの時、彼女を突き動かした衝動の正体は何だったろう。腕を沈め切っても触れることはなかった湖の底よ。少女の望みは何だった、払った代償は何だった。
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