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ヘルウィークのhorahukiのレビュー・感想・評価

ヘルウィーク(2017年製作の映画)
3.3
6月14日公開『パージ:エクスペリメント』に向けて♫

『パージ』は過去作全てをジェームズデモナコ監督が撮っていましたが、デモナコさんは新作では脚本・製作となり、監督はジェラルドマクマリーさんに変更となりました。というわけで新作の予習にマクマリー監督の前作を見てみました。

「入会すれば未来が保証される」と言われる大学生サークル「ラムダ」に入会するために、入会試験と称されるハートマン軍曹ばりのシゴキを先輩たちから一週間受け続ける地獄のような『ヘルウィーク 』の中で、そんな仕打ちに疑問を抱いていく主人公ズリックを描いた社会派。タイトルからしてホラーっぽいし、鉈でも持ってんのかっていうポスターですが、ホラー要素はほぼないシゴキ映画でした。

「ラムダ」というフラタニティに対する新入生たちの本気度を試すという名目で拷問のようなシゴキの数々が彼らに対して牙を剥く。その中で肋骨を折りつつも耐え抜こうとする主人公。あまりの理不尽な暴力にラムダへの入会を諦める仲間もいる中、ひたすらに辛抱し続ける主人公の姿は、ラムダが如何に彼らにとって重要なのかということの裏返し。

主人公たちが通う大学が黒人のみしかいないということもあり、当然ラムダはOB含めて全員黒人。差別され続けてきた彼らが社会に出てバラバラになった後も、根強く世の中に残る差別に強く立ち向かっていくためにはラムダという先人たちの支えが必要ということなのでしょう。

主人公の父親は過去にラムダの入会を諦めたということがプロローグで語られるのですが、それ以上のバックグラウンドは語られない。主人公のラムダにかける強い気持ちは、ラムダに入らなかったがために虐げられ続けた父親を見続けてきたことの裏返しなのではないかということが推測されるし、ラストに電話をかける彼の姿には言葉にできない悲鳴のようなものを感じて辛くなった。

時の経過とともにシゴキだけが残り、「同胞愛、兄弟愛」を教え込むという本来の意味が形骸化してしまった入会試験に対し、奴隷解放運動で有名なフレデリックダグラスを引き合いに出し、人格を否定し奴隷化するというかつて黒人がされていたことを、「黒人が黒人に対して行なっている」のだという批判を込めて描き切った本作は、ラムダというフラタニティから発展し、社会全体に同様な状態が少なからずあるのではないかという感覚を呼び起こす。

腐り切った社会を正すのではなく、社会へ旅立つ若者に真の強さを教え込む必要性を本来の「ラムダ」という精神性の復活とともに新たな「解放」として説いたのは面白いなって思いました。まあ向こうの実情は知らないんでテキトーなこと書いてますがね(笑)

あんまり『パージ』とは繋がらなそうな内容だけど、暴力と解放というテーマと考えれば字面だけだとそれっぽいような気もしますね(^_^;)
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