グラッデン

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のグラッデンのレビュー・感想・評価

4.2
「仕事をしよう」

スティーブン・スピルバーグ監督の「社会派モード」。今月、最新作の『レディ・プレイヤー1』の公開が控えていることを考えると、作風の振り幅の大きさに改めて驚かされます。

また、社会派モードの作品では、監督の強いメッセージが込められてきましたが、本作においても「報道の自由」という非常にタイムリーな題材を取り上げたことで、フェイクニュースが大きな影響を及ぼす現代社会において「今見るべき」映画であると強く感じさせられました。

‪私見ですが、本作を通じて重要な視点として考えたことは以下の2点です。1つは、ボストン・グローブ紙の報道を題材にした『スポットライト 世紀のスクープ』と同様、強力な権力に屈することなく「権力の監視者」報道のあるべき姿を強く示したことです。特に、本作の中心となるワシントンポスト紙の立ち位置から見ると、報道機関の大義を果たすと同時に経営の危機に立たされる可能性を秘めており、決断の重さを強く感じさせられます。‬

‪もう1つは、記事が世に伝えるまでの過程において、多くの人たちの手によって作られているということです。執筆する記者だけではなく、編集デスク、記事の校閲者、当時の活版印刷を作り込む人、そして配達に向かう人々の手を通じて新聞は作られていく過程を描いています。情報収集が限られ、まだまだアナログな時代だったから、と言えばそこまでですが、こうした過程こそ報道機関の価値と責任を付与するものであり、同時に昨今のフェイクニュースに対する強烈な批判にも繋がると思います。‬
‪なお、‬そうした過程を魅力的に見せるアプローチ、大人たちの緊迫する場面の一服の清涼剤となった子供たちの存在など、スピルバーグ監督ならではの名人芸だったのではないかと。

そして、トム・ハンクスとメリル・ストリープの名優コンビ。2人とも、近作は伝記・ノンフィクション作品の出演が多い印象は受けますが、役作りはもちろん重厚な演技は抜群の存在感を見せてくれたと思います。

ショートスパンで作られた作品とは聞きましたが、一本の芯の通った良作だと思います。