ベルサイユ製麺

蜘蛛の巣を払う女のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

蜘蛛の巣を払う女(2018年製作の映画)
3.9
はらたま!きよたま!
祓う女と言えば『うる星やつら』のサクラ先生ですね!あとタイトーのビデオゲーム『奇々怪界』の小夜ちゃん!…なんちゃって。いつまでも昭和気分で居られないので、そろそろ平成とやらに参りまーす。


そう、今作で女が払うのは蜘蛛の巣ですよ!蜘蛛目線(8つ)で言えば『女に巣を払われた蜘蛛』です。怪獣パニック物でしょうなあ。

因みにドラゴン・タトゥは先ずだいぶ前にオリジナルのヨーロッパ版『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』を観てまして、その後期待していたフィンチャー版リメイクが変にウェットな事に若干ガッカリ。以降の『ミレニアム2』『…3』は未見でございます。


ストックホルム。フェミ版鼠小僧家業に勤しむリスベットの元に仕事の依頼が→各国の防衛システムに侵入しコントロール出来るソフトウェア《ファイアフォール》を米・国家安全保障局(NSA )の依頼で開発した男パルデムが、約束を反故にされソフトを奪われたので奪回して欲しいと言うのだ…。


まあ細々とストーリーなんて書いてもしょうがないと言うか、捉えようが無い程度には複雑なお話しなのですが、それでも悪足掻きしておくと…
★先ず冒頭でリスベットの出自、”幼少期に姉を止む無く、恐ろしい父の元に置いてひとり逃げ出した”という過去が描かれまして、
以降の物語展開を大雑把に構図化すると⤵︎
⚫︎NSAのコンピュータをハッキングしてファイアフォールを奪取するリスベット。
⚫︎ファイアフォールを取り戻そうと躍起になるNSAの男ニーデム。
⚫︎ファイアフォールを手にしたリスベットを、なりふり構わぬ手段で追い詰める“蜘蛛のタトゥー”の男たち・フロム・ロシア。彼等の正体は⁉︎
↪︎で、窮地に陥ったリスベットは、かつて共闘したジャーナリストのミカエルに助けを乞いますよ。

これはネタバレですが、
蜘蛛の巣を払う、は比喩です!!
…驚いたことに、続編では有りますが主演のリスベットも、頼れる男ミカエルも役者交代。監督はフィンチャーから…誰?と思ったら『ドント・ブリーズ』の監督なのですな!大英断!!
先ずですね、…リスベット良いよ!新鋭(よく知らないのでそういう事にした)クレア・フォイ!…個人的には前作のルーニー・マーラはちょっとルックスが良すぎてダメだと思ってたんですよね。そこにいくとクレア・フォイは良いっすよ。なんかいろいろとリアリティが立ち昇ってます。
ミカエルはダニエル・クレイグから、知らん人にタッチ。クリーピー的に言えば「あの人ミカエルじゃありません、全然知らない人です!」ってトコですが、リスベットも知らん人に変わってるので、ここは痛み分けの格好。で、知らん人aka今日からミカエル、なかなか良いです。正直ダニエル・クレイグじゃピンチに陥りそうな気がしないんですよね…。
で、監督の交代ですが、デヴィッド・フィンチャーの後を継ぐなんてプレッシャーとストレスで胃どころか全身に穴が空いて即死ぬに違いないと思ったら、意外にも伸び伸びやってる印象なんですよね。前作の繊細でゴスなムードは大分後退して、かわりにエンターテインメント性が前面に出ている気がします。…皮肉にも、ダニエル・クレイグが居なくなったかわりに全体的な“007”ぽさがやって来ているみたいな。爆破にカーチェイスにガンアクション、とやたらに動的な作風に舵を切ってまして、…まあここが評価の分かれ目ですよね。前作のザイリアン×フィンチャーの繊細さであるとか内面の掘り下げが気に入っていた方にはきっとしっくりこなかったでしょう。個人的には、前作からの変にエモいリスベットに違和感を覚えたままだったので、いっそこのくらいカラっとイメチェンしてくれた方がありがたかったですよ。作中何度か“息が出来ない”シーンが有ったのは、『ドント・ブリーズ』ファン(か、ヤン・イクチュンのファンへの)へのサービスなのでしょうか?
本作、“継承”がメインモチーフの一つになっていて、その点から見ればアウグスト(パルデムの子で数学の天才ちびっこ)がどんな未来を選ぶのか?なんて、今後の展開には関係無いかもしれないけど想像を膨らませて楽しむことが出来ますね。
それにしても、…どんな映画でも大概そうなのですがやっぱりロシアの犯罪組織怖い。大昔から現実に怖いんだろうな…。でも、現代的な恐怖という事で言えばハッカーの方が数段怖い…。殆ど魔法使いのようなチートめいた能力です。気がつかないうちに身ぐるみ剥がされて社会的にも物理的にも抹殺ですよ。あー怖。
彼らハッカーに対する自衛策は、強いて言えば”無価値な人間”になる事。…おやおやおや?わたくし知らず知らずにハッカーの脅威を完璧にシャットアウトしてたみたいですぞ?ガッハッハ!!
はぁ…。

とにかくこれはこれで楽しかったので、このままのノリで更に続編作ってくれれば良いです。今後も“オリジナルは未見”のままでイイや。
あと、出来れば日本版リメイクとかやってみて欲しいですね。リスベットに米倉涼子、ミカエルに船越英一郎とかで、バイクで赤レンガ倉庫ら辺走ったり、パソコンすごくカチャカチャやったらモニターに64ドット位で書かれたドクロが赤・黒・赤・黒ってペカペカして《GAMEOVER!GAME OVER !》つって、如何にもマイコンぽい音で葬送行進曲がかかる!…みたいなやつ。監督はもちろん堤幸彦ですよ!!