杜口

トワイライトQの杜口のレビュー・感想・評価

トワイライトQ(1987年製作の映画)
4.0
トワイライト・ゾーンのオマージュである題からもわかるように不思議な話を一話完結でみせていくシリーズの予定だったのだろう。が、2話のみで打ち切りになってしまった。
そんな本作だが、押井守が監督、脚本の迷宮物件FILE538は素晴らしい。

今作も押井作品恒例の魚、鳥、犬というモチーフが出てくる。それで、魚と鳥が結びつき、それを犬が分離するというのが常だが、今作は犬による分離が起きない。

そのために犬は迷宮物件(魚と鳥がくっついたもの)の観測者(探偵)となるが、この閉ざされた迷宮は迷宮のまま終わる。
(うる星2で言うならばラムちゃんの夢の世界から抜け出ぬまま終わるみたいな感じ。)
このような幻想的な閉じた世界はボルヘスが得意としたものだった。
押井はボルヘスの影響下にある寺山修司の影響下にあるため、まあ似てるのは当然かもしれない。

ボルヘスは細部と全体が一致する作品像を理想とした。そのため膨大な細部を必要とする長編は書かなかった。奇しくも押井守もシネマの神は細部に宿ると言い、しかも今作はボルヘスと同じく短編である。

だからこそ、押井守は長編では細部と全体が一致した幻想的な世界(魚と鳥がくっついたもの)が成立不可能であるため、犬が魚と鳥を分離させるという構造を長編作品ではとっているのだろう。

まあそんな感じで、今作は押井守が長編作品の時にボルヘスが抱えた問題をどう乗り越えているかを逆説的に知ることができる作品であった。

この辺の魚、鳥、犬の話はここが詳しいので、お好きな方はこちらもどうぞ
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201201150090.html
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