「あらゆる物語は語り手が入ると不確かになる」
50を過ぎて、ランニングを始めた。
いったんやり始めると突き詰めるタイプの私。年間2千キロ走り、レースに備える。
この秋冬シーズンも、フルマラソン2回、ハーフマラソン3回。目標タイムを達成するたびに、密かな喜びに浸る。まだまだ1秒でも自己ベストを縮めたい。
レース経験を重ねるうちに、ちょっとだけ“上手な走り方”が分かってきた。
大事なことは、とにかく足を前に出すこと。それだけ。
苦しいときは、ついつい腕を大きく振って、全身で藻掻いてしまう。でも一向に前に進まない。
私の体をゴールに近づけるのは、ただ前に振り出された両の脚のみ。
「何が幸せかは、この私が決める」