凄かった。
なんというか、言葉にするため
頭の中でまとめるにはもう少し時間が欲しい。
今まで観たことのない手法とストーリーの奥行には
いくつもの階層があるようで、何度も思考が行きつ戻りつしている。
あのカラックスがミュージカル??とまったくもって
信じられなかったけれどそれはもう鮮やかに裏切られ、
なにをどうやっても彼にしか挑戦できない作品だった。
すべてがネタバレになってしまいそうだし
どのように解釈するのかはそれぞれなのだけれど、
ものすごくアイロニーの効いた現代の闇と共に
頂から転げ落ちるさまは『ポーラX』のように救いがなかった。
中でも気になったのは劇中で繰り返し登場する
アン(マリオン・コティヤール)の齧りかけの赤い林檎と
ボトル入りのミネラルウォーター、ヘンリー
(アダム・ドライバー)が何度か食べているバナナ。
(猿のぬいぐるみはカラックスが好きだから、と別作品でも登場しているらしいので(気付かなかった)置いといて)
齧りかけの林檎といえばアダムとイヴの楽園での
大きな鍵となる知恵の実ともいわれる禁断の果実を
表しているのか、メタファーとしての意味は。
人々を魅了し魂を震わせる聖なるオペラ歌手の愛する女性と
俗っぽい笑いの世界に君臨したものの、徐々に均衡がとれなくなる男。
きっかけは二人の子供、アネットだとしたら
愛情がひっくり返って憎しみになったのか、
格差により落ちぶれた己の嫌悪なのか。
いずれにせよ、深淵をのぞくときには
すでにその淵でもに足を突っ込んでいるのだろう。
ロックオペラで思い出すのが
『トミー』 『ファントム・オブ・パラダイス』
『ジーザス・クライスト・スーパースター』などだけれど、今回新たな作品が加わった。しかも誰も観たことのない手法で。
まだまだ書きたい気もするけれど細切れの
単語しか出てこない。
いえばヘンリー(アダム・ドライバー)がバイクで一人疾走中、ヘルメットから見える顔半分のシーンは『ファントム・オブ・パラダイス』のウィンスローみたいだったし
二人乗りバイクのシーンはドニ・ラヴァンとジュリー・デルピーよりも『ポーラX』のカトリーヌ・ドヌーヴを連想した。
※レオス・カラックス監督にサインと握手していただきました!!!