オクターヴ

アネットのオクターヴのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
4.8
我々は何を観たのか?少し考える時間がほしい。傑作とつぶやくのは簡単で、どうやら私の理解の範疇にないパターンの映画らしい。落ち着くまで時間がかかる。あの指揮者の独白と演奏がむちゃくちゃいい。マジであれ何?美しいという形容詞を使っていいのか?そのあたり迷う。安易に持ち上げちゃいけない雰囲気がどんどん濃くなり、救いや希望という言葉が何か急に安っぽく感じるようになる。ミュージカルという形式だから見た目は華やかなんだけど、見ちゃいけないものをずっと見ている気がするのだ。マリオン・コティヤールの細くて長い脚がいいんだよな〜もうまさに体当たりの演技なんだけど、この時代でもエロティックなシーンを堂々と撮れるのはカラックスの強みの一つだと思う。語りにくい時代なんだけどね。ここまでわかりやすいカラックス映画もないと思うのだが、まるくなったもんだな〜というのは表層だけの部分で、何層にも見えにくい闇があって、それをとらえることができるかどうかは観客に託されている。真に評価できるのは鑑賞の2回目からだな…というのが本音だが。