悪魔の毒々クチビル

操作された都市の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

操作された都市(2017年製作の映画)
4.5
その木は腐ってなどいなかった

殺人の濡れ衣を着せられた無職の凄腕ゲーマーが脱獄してゲーム仲間と真相を探っていくお話。


韓国のサスペンス映画です。
ちょっと他の作品の感想書いていた時に上手く纏まらんからって事で、息抜き感覚でネトフリから何となく選んで観てみた作品でございます。

そんなノリで観た今作ですが、めっちゃ面白かった……!
観る前はちょっと眠くなって来ていたし、微妙そうな感じだったら後日見直そうとか思っていましたがそんな考えが吹き飛ぶくらい内容に釘付けでした。

先に言っておくと、主に脱獄~ゲーム仲間と合流する辺りまではかなり展開が強引ではあります。
脱獄の時に看守に捕まりそうになるも、恐らく主人公が無罪なのを察していたであろうとは言えあっさり逃がしちゃうし、道中出会った陽気な黒人夫婦のお陰で検問も通過出来て車まで貰えたりと中々のご都合主義。
因みに看守は「犯罪都市」シリーズの班長や最近だと「オオカミ狩り」の殺人マシーン、アルファ役での熱演が記憶に新しいチェ・グイファです。

しかしながら「この後どうなるんだろう」というワクワクやハラハラが途切れない展開の連続や、魅力的なキャラ同士のやり取り等、作品に夢中になれるフックが満載で結局はド嵌まりしちゃうのでした。

序盤で主人公のクォンが即効逮捕されてトントン拍子で収容所送りになり、他の囚人達にボコられたりどんどん最悪な流れを経て自分の無実を信じてくれる仲間に出会う展開はやはり上がりますね。
そのゲーマー仲間達も「ひげ面」というユーザー名や声でおっさんかと思っていたら声をアプリで変えていた天才ハッカーなシャイ少女だったり、名前が「余白の美」のおっさんは会ってみたら余白(ハゲ)だったりと皆キャラも立っていて良かったです。
技術者とか各々の経歴を活かしてドローンを作ったりハッキングしたり潜入までして、真相を探っていくくだりは非常に見応えありましたし、真相に近付くに連れて思いの外壮大な事件なのが分かっていく様も凄く良い。
ちょっと「ひげ面」のハッキング能力が高すぎて彼女にかなり頼り気味ではありましたが。
彼女がクォンの事件を調べた結果、様々な違和感を発見したお陰で他のチームメイトも味方になってくれた訳ですしね。
彼女を演じたシム・ウンギョンは最近ちょくちょく邦画にも出ているようで。

実生活では会った事のない面々ですが、クォンはチームメイトから「隊長」と呼び尊敬されていて、ゲームとチャット会話だけの関係性でも無実を証明するために命懸けで動いてくれるってのもネットのみの関係でも友情は存在すると思っている身としてはアツくて好き。それがお互い社会からちょっと疎外感を感じている者同士な所も良いよね。
後半のゲームじゃなくて現実世界で実際にミッションこなすシーンでの息の合った「ラジャー!!」が最高でした。
オープニングシーンでクォン達がプレイ中のゲームを実写で描写していますが、そこで架空のゲームキャラを演じていた俳優が実際の敵も演じていますっていう作りも面白い。

作風も結構何でもアリで、土台こそサスペンスながらめっちゃ近未来的なテクノロジーが敵のアジトにあったり、かつてテコンドーの代表だったクォンが仲間を助けに暗闇から敵に華麗な蹴りで奇襲をかけるアクションシーンもあれば、終盤はワイスピばりのぶっ飛びカーアクションまで用意されていて2時間ちょいという長めの尺が全然飽きない造りでした。
並走しながら別の車へ跳び移るのとかまんまワイスピよね。

ラストもハッピーなんだけど唯一残った悲しい部分で涙腺を刺激してくるのがこれまた切なかったです。
これは良いモノ観ましたわ。