愛は死をも救済するか
自分は世界にとって邪魔者で、たった1人孤独に過ぎていく日常はあまりにも平坦。
生きていく理由も分からず、忸怩たる思いは行き場を失う。
鬱蒼とした日々を送る若者にとって、今作は衝動を現実にしたような"大きな歪み"をもたらしてくれる。
フィクションであることを忘れたくなるほど、閉ざされた世界に生きていたあの頃を再現した雰囲気。
セックスをする事に、日常からの脱却を期待していた過去の気持ちが蘇る。
死体やドラッグも、自分が人間である証明に過ぎない感覚。
清濁併せ持つ登場人物たちは、孤独から目を逸らし、自身の存在意義を模索する。
敏感な年頃の彼らにとって、澱んだ河原に隣接する街は"生"とは程遠い環境だ。
若者は死んだように生き、やがて生きる理由を見つける。
いつか振り返り、1人きりでは無かったことに気づくのだ。