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死んだってへっちゃらさのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

死んだってへっちゃらさ(1990年製作の映画)
4.0
["この映画では動物に危害を加えていません"は流石に嘘] 80点

"1001の映画"に掲載されている中でもSSS級鑑賞困難作に指定された(私が勝手に指定した)一本。海外にも廃版のVHSしか存在しないという文字通り"幻の映画"。そんな作品を掲載すんなって。昨年末新文芸坐シネマテークで日本公開されたらしいが、レポート地獄真っただ中だった私がそんなこと知る由もなく、マラソン完走の最大の障壁となっていた。ちなみに、"この映画では動物に危害を加えていません"と最後に出てきたが流石に嘘だろう。スタッフが美味しく頂いたに違いない。

西インド諸島出身のジョスリンとベニン出身のダーは闘鶏で生計を立てているコンビである。ふたりはジョスリンの母親の友人ピエールが保有するディスコの地下で違法闘鶏を開始する。ジョスリンは"死んだってへっちゃらさ"と名付けた雄鶏にダーはピエールの若妻トニに執着するようになる。

ドゥニは三本目だが彼女の映画が醸し出す雰囲気は感じ取れるようになってしまった。雑多だが同時に統制されている空気感やイカした音楽は「美しき仕事」にそっくりだった。個人的には同作の方が好みだが、本作品にもしっかりと魅せられてしまった。特に"死んだってへっちゃらさ"とジョスリンが共に血を流すシーンは印象的だった。

誰が"死ぬ"ことに対して誰が"へっちゃら"だったのだろうか。強がり以外の何ものでもない命名によって稀代の名コンビだったジョスリンとダーの仲は引き裂かれ、後には空虚しか残らない。鶏は"鶏"でいいのである。
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