Walrus

夜の浜辺でひとりのWalrusのネタバレレビュー・内容・結末

夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

- 私が望むのは私らしく生きること。
ぶれないで、
何があっても私らしく生きたい。

不倫や愛より、自分らしく生きること、そしてそれによってもたらされた孤独がテーマだと思う。

映画に出てくる黒い服の男は何なのかという謎だけど、自己というものではないかなと思う。

第1部に、好きなあの人が会いに来るか来ないかの会話が淡々と続く中、「わからない」「とにかく私は待たない」「来たら会ってみるわ」というときのヨンヒは曖昧な表情をしていた。会話の途中、黒い服の男が何回か近づいてきて、その度にヨンヒは友達を連れて避けた。

次は海辺で。ヨンヒは好きな人の顔を砂に描いて「あの人に会いたい」「私のことを考えてるかしら」と言った後、海へ向かった。右側に向かって帰る友達の後ろ姿から画面がゆっくりと移り、さっきの海にはもうヨンヒの姿がなかった。さらに左へ視線が移っていくと、黒い服の男がヨンヒを背負って遠くに行った。

そして第2部で、ヨンヒが部屋の中から窓越しに海を眺め、横に黒い服の男がベランダから一生懸命窓を拭いてた。
どうして拭いてるんだろう。
でもこの3つのシーンで、ヨンヒとこの男との距離感が面白かった。

「全員資格がない。
卑怯で偽物に満足して生きてる。
満足してるけど、
愛される資格はない。」
知り合いの人たちとの食事中、笑っている次の瞬間怒り出し、そして次の瞬間また先輩に甘えてキスをし始める。
こんな風に生きていたら、孤独や苦しみを含めて全ての感情がピュアなものになりそう。
自分の美意識とは違うけど、このような生き方をする人を見ているだけで、なんだか自分の気持ちまですっきりする。

現実と非現実との境界線が曖昧な物語。
そしてホン・サンスさんとキム・ミニさんとは、自分たちのことを映画の中の人物に注ぎ込み、また映画の中の人物がかえって現実の中のホン・サンスさんとキム・ミニさんになる、という現実と映画の境界線が曖昧になるような繰り返しではないかなと思う。

夜の浜辺でひとりというけど、そのようなシーンはなかった。
映像外のどこかに、ひっそりと存在してるのかな。
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